吉田光市建流審が講演

工夫こらし事業を執行/再生に向けた足取り築ける年に

国交省の吉田光市建設流通政策審議官が1月24日の通常理事会で行った「最近の建設業界をめぐる諸情勢」についての講演の要旨は、次のとおり。


5年ぶりに建設業行政担当に戻ってきて、いま強く感じているのは、人の問題が難しくなっているということだ。1つは現場の担い手である技能労働者の確保、もう1つは地域の担い手である地場の建設業者の問題である。この担い手確保の体制を固めないと、将来の建設業にとどまらず、日本全体にとってもたいへんなことになると思っている。再生に向けてしっかりとした足取りを築ける年にしたい。

業界から、中長期的な見通しが得られないと、雇用の確保も設備投資もできないという声を聞く。平成25年度から26年度にかけて、1.9%増であるが、公共事業予算が増え、十数年間続いてきた当初予算の削減傾向に歯止めをかけることができた。

例年、予算編成前に「予算編成の基本方針」が閣議決定されるが、今回は「国民生活の将来を見据えて、既設施設の機能が効果的に発揮されるよう計画的な整備を推進していく必要がある」と、これまで盛り込まれることのなかった「計画的」という言葉が明記された。太田国交大臣は「15度の角度で上昇する予算が理想」と語っているが、今後の公共事業の計画的かつ着実な推進の足がかりとなる予算が確保できたのではないかと思う。

事業の執行面では、不調・不落となる工事が目立つことから、公共事業を増やしても執行できないのではないか、供給力に応じて投資を減らしてもいいのではないか、という指摘が財務省からあったが、これに対しては長期的な見通しに立った予算の確保こそが必要と回答した。当初予算に加え、国交省には1兆円の補正予算があるので、これをしっかり執行することが必要であると考える。

1月21日に公共事業の円滑な施工確保対策を公表した。不調・不落の発生について「全体的に技能者や資材が不足して仕事が止まっているわけではない。価格が合わないため」と説明しているが、大規模な建築工事で不調・不落が発生しているので、建築工事に焦点を絞った対策もとりまとめた。

具体的には、予定価格作成から発注までのタイムラグが半年程度あり、その間に価格が動いて実態と合わなくなっているので、最新単価を適用した予定価格を作成する。不調になった場合は、入札参加者から見積もりをとって予定価格をつくり直す。数量や施工条件が現場の実態に合わないこともあるので、しっかり見直しを行う。

自治体は建築関係の技術者が少ないために、単価を上げることや数量を増やす判断ができないでいるので、地方整備局に相談窓口を設けて、自治体の職員の背中を押していくなどの対策を講じる。

また、設計労務単価を機動的に見直す。すでに26年度の労務単価を決めるため、昨年10月に実施した調査をとりまとめており、それにもとづく新単価をこの2月から適用する。

維持修繕工事は手間がかかって、うまみがないという声を聞く。新設工事の歩掛りを使っているのが原因になっているので見直しする。歩切りについては、根絶に向けて再度要請していく。取り組みの鈍いところには個別に指導する。スライド条項は手続きが煩雑だという意見があるので、見直しを含めて対応を考えていく。

仕事が増えてくると技術者不足が起きるが、その対応として地域の実情を加味しながら発注ロットの大規模化を図る。1人の技術者が複数の仕事を同時に手がけることは、企業にとっても利益になることなので、被災地ですでに実施している主任技術者の兼任要件を5キロメートルから10キロメートルに緩和する。

企業が受注計画を立てられるように、県と市のトータルの発注見通しを示すようにする。

24年度補正予算の工事の発注が遅れ、地域によっては災害の発生で今年度内の消化が難しく、事故繰越が問題になっているが、財務省と話し合い、膨大な書類を要求することなく、円滑に手続きが進むよう柔軟な対応を要請した。地方整備局や自治体にも通知文を出し、財務局に相談を持ち込むよう周知している。事故繰越は、執行見通しの立たない繰越ではないので、4~6月期に繰越ができないか検討している。4~6月期は仕事が少ない時期でもあるので、業務の平準化にもつながる措置だと思う。

このようにいろいろな工夫をして、しっかり事業を執行していきたい。それが次の予算確保につながると思う。

建設業の就業者数は、ピーク時(平成9年)の680万人から24年の500万人へと180万人減少している。このうちの100万人が34歳以下の就業者である。団塊世代が退き、人口減少が進む中で、若年者を確保するには他産業との奪い合いになる。建設業の魅力を高めないと若年者の確保は難しい。

若年者確保の環境整備としてまず必要なのは賃金の確保だ。それで、今年度の設計労務単価を全国平均15%アップした。この金額は過去最も高い賃金の7割の水準に戻っただけである。賃金が上がって、建設業は高コスト構造に戻りつつあるとの批判があるが、これには、落ち込んだ賃金が回復過程にあるだけと反論している。もう少しピーク時の賃金に戻せるのではないかと思っている。

建設業の担い手確保策として、労務単価の引き上げ、社会保険未加入対策などの就労環境の整備と入札契約制度の改革、教育訓練機能の強化に取り組んでいる。さらに建設産業活性化会議を設置して業界、行政、学界が一体となって講ずべき対策の検討を進めており、今年夏ごろに中間とりまとめを行う予定だ。

品確法改正の法案骨子が昨年末にまとめられた。密接に関連する建設業法、入契法の改正も行う。品確法の改正は、公共工事の品質確保に加え、中長期的な担い手確保への配慮を柱にしている。災害に対応するため、人や機械を抱えている企業を評価する。また、若い人を抱え、育成している企業を評価することなどを考えている。

具体的な課題として、今後メンテナンスの需要が増えるが、その中で地域維持体制確保のため、複数年度契約、複数業務の一括発注や共同受注方式の採用など全体的な見直しを行い、それを法律に位置づけて、発注者に改革を促していくことにしている。

建設業法の改正では、業種区分の見直しを数年前から検討しているが、解体工事については、「とび・土工」から分離する方向で整理したいと考えている。