全中建若手経営者部会

TPP交渉、社会保険加入の講演を開催
建設業の進路探る

平成25年度全中建若手経営者部会(佐藤伸二部会長)が平成25年11月21日午後、愛知県名古屋市のホテル名古屋ガーデンパレスで開催された。同日は2部構成で行われ、第1部では、内閣府TPP政府対策本部の高橋和久参事官が「建設業とTPP」をテーマに講演したあと、建設業情報管理センターの業務や部会開催地の愛知県の観光政策の紹介が行われた。第2部では中部地方整備局の下岡壽建設産業調整官が「建設産業の現状と課題」をテーマに講演した。部会に衣替えして2回目となる会議には、松井守夫会長、土志田領司副会長、佐藤部会長と全国から34名の部会員が出席した。


同日はまず松井会長が次のようにあいさつした。「長期にわたって公共事業が削減され、建設技能者が減少し、建設業は弱体化した。このため行政は技能労働者の確保、建設業の再生を図るため労務単価の引き上げ、入札契約制度見直しを進めており、業界はこの動きに応える必要がある。全中建はいま、会員の生の声を聞き、地域の現状を知るため意見交換会を開催している(6面参照)。国交大臣から技能者の賃金確保、社会保険への加入促進を求められている。元請から下請へ確実に賃金が回っているかどうかを確認しないといけない。国の方針に沿った対応をお願いする。中小建設業の環境は依然厳しいが、こうしたときこそ心を合わせ、地域住民の安全安心を守り、地域の主要産業として雇用を確保し、若者の入職促進や技能・技術の伝承を図り、社会に奉仕する力強い地場産業を目指したいので協力をお願いする」

続いて佐藤部会長が「部会長に就任して2年になる。私は愛知出身なので、今回は名古屋で開催した。24年のいまごろは総選挙が話題になっていた。疲弊していた建設業は人材不足、資材不足に悩むなど様変わりしてきた。きょうは現在、交渉が進んでいるTPP(環太平洋パートナーシップ)が建設業に影響を及ぼすことも予想されるので講演をお願いした」とあいさつした。

このあとTPP政府対策本部の高橋参事官が講演した。講演の要旨は次のとおり。


TPP政府対策本部は、TPP交渉が広い分野に及ぶところから、総合的調整を行うために25年4月、内閣府に設置された。

日本のGDPの対世界の比率は、1990年の15%から2010年には9%に低下、2030年には6%に落ち込み、日本の相対的地位の低下が進むと見込まれている。一方、アジアの中間層は、今後10年間で10億人増加。2020年にはアジアの個人消費の規模がわが国の4.5倍に達し、欧州を抜いて米国に並ぶと予測されている。

こうしたアジアの成長を日本の活力にどう取り込むかという観点からTPP交渉に加わった。

TPP交渉にはシンガポール、ニュージランド、チリ、ブルネイ、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダ、日本の12カ国が参加。この12カ国の人口は世界の約10%、GDPは同約40%、貿易額は同3分の1を占める。

国際収支は、貿易と海外からの投資収入等で構成されるが、日本は2011年に31年ぶりに貿易赤字に転落(直近では2012年7月から13年10月まで16カ月連続で貿易赤字)、このまま貿易赤字が続き、それを補うほどに投資収支が伸びなければ、経常収支も悪化し続けるおそれがある。経常収支がマイナスになると、海外から資本を受け入れる必要が生じる。貿易収支、所得収支の黒字を両方とも確保することが必要である。

TPP交渉で扱われる分野は21にわたるが、このうち建設業に関係しているのは、政府調達、労働、物品市場アクセス、サービス(越境サービス・資格や免許の相互承認)の分野である。

この交渉に対して、建設業界からも意見が出されている。「WTO政府調達協定の水準を堅持するとともに、地域の建設業の現状や果たしている役割に配慮し、地域建設業が影響を受けることのないように交渉する」「公共工事への外国企業参入を認めていない国に対して、より広範な公共工事市場の開放を要求する」などだが、こうした意見を踏まえて交渉にあたっている。

講演のあと、建設業情報管理センターから経営事項審査など同センターが手がけている業務概要の説明があった。

続いて愛知県産業労働部観光コンベンション課の大参澄夫課長が愛知県の観光政策について説明。愛知の物産と観光を紹介した。さらに愛知にゆかりの6人の女性(市・江・おね・まつ・吉乃・於大)で結成された「あいち戦国姫隊」が登場、歌と踊りとトークで愛知の歴史と観光を紹介した。

第2部では、国交省中部地方整備局の下岡壽建設産業調整官が「建設産業の現状と課題」をテーマに講演した。講演の要旨は次のとおり。


建設投資の急激な減少にともない、受注競争が激化し、受注高の減少、ダンピング受注、企業利益率の悪化、人員削減が進行し、地域社会の担い手である建設業の事業継続に不安が生じている。また、技能労働者の賃金の下落など就業者の労働環境が悪化し、入職者の減少、高齢化が進行し、将来の担い手の確保、技術の承継などに懸念が生じている。この課題解決に向けて国交省は、公共工事設計労務単価の引き上げ、低入札価格調査基準の見直し、公共事業関係費の確保を図ったほか、今後の地域の建設産業と入札契約制度のあり方の検討に着手した。

また、元下関係は、昭和40年代は元請も施工に携わり、1次下請が労務者を雇用して施工していた。50年代は、元請が施工管理を担当、施工は1次下請が担い、その一部を2次下請にアウトソーシングしていた。60年代になると施工管理を1次下請が担い、施工は2次、3次と下請が重層化した。最近は、元請は商社化し、外注する専門業者も細分化している。

設計労務単価を全国平均15.1%引き上げたが、この中に本人負担分の法定福利費が含まれている。事業主負担分の法定福利費は平成24年に手当している。法定福利費を負担して社会保険への加入を促進するため、25年9月から専門工事業団体が作成する標準見積書の一斉活用が始まった。標準見積書を尊重して対応してほしい。

経営者は、今後の企業経営の進むべき方向を考えると思うが、その際にはまず大型プロジェクトや国土強靭(きょうじん)化計画など国土のグランドデザインがどのようになるかを考える必要があると思う。次に地域の需要を細かく拾い出す必要がある。老朽化した道路、橋、下水道の更新、マンションの建て替えなどの需要がある。その際のキーワードは耐震化である。もう一つのキーワードは予算である。財政が厳しいので、公共事業予算が大幅に増えるとは考えにくい。それで優先順位を考えた事業執行が行われることになるが、その優先度を考慮することも、経営戦略上欠かせないと思う。

また、職人の多能工化、他業種との協同化、ブランド化など創造力を働かせて、こうしたことに取り組み、建設産業を盛り上げていってほしい。