新春インタビュー(1)

国づくりと公共事業をもう一度やり直すとき
いいものを残すため契約制度を考える
施工業者をきちんと評価する制度確立へ

脇 雅史 参議院議員・自由民主党参議院幹事長
ききて
土志田領司 (一社)全国中小建設業協会副会長・広報委員長
河﨑  茂 (一社)全国中小建設業協会理事・広報副委員長

新春に始まる通常国会に提出予定の公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)改正法案。その策定に中心的役割を担ったのが脇参議院議員だ。建設業は25年春からの需要増にともない、受注が拡大しつつある。だが、デフレ、需要減、入札契約制度の歪んだ運用の三重苦に長年陥っている間に受けた傷はまだ癒(い)えない。ましてや地域の中小建設業はいまだ存立の危機に瀕(ひん)している。技能労働者の労働福祉の改善、若年労働者の入職促進など課題も山積している。新しい年を迎えて、脇議員に建設業の進むべき新しい道を聞いた。

--政権が交代して1年が経過し、建設業界の雰囲気が様変わりし、この機会を逸(いっ)すると建設業の将来は、成り立たなくなるという強い危機感をもっている。その中で業界は、脇先生を頼みの綱、命の綱と思っている。建設業はいまもってダンピング受注の横行、くじ引きという運否天賦ぷ(うんぷてんぷ)でないと仕事が受注できない状況に苦しんでいる。先日、全中建若手経営者部会を開催したが(11面参照)、若手が胸を張って経営できる産業に戻ることを期待している

■間違った政策運営が最大の要因
 全中建の会員が各地域で果たしてきた役割は大きい。日本各地の強さを支えてきた。逆にその分だけ苦労も多かったと思う。苦労の最大の要因は、間違った政策運営がとられてきたことにある。その間違いは、民主党政権以前からあった。そのしわが寄って、建設業は将来が見通せない産業になってしまった。

民主党政権になってさまざまな改善が滞って、ますます悪い方向へいってしまった。平成24年12月に安倍政権が誕生して、これまで溜まっていた課題の解決に向けて大車輪で動き出した。振り返ってみると、さまざまな間違いを犯してきた。公共事業は必要ない、というのも大きな間違いだ。

公共事業は、国家財政や地域事情に応じて、しかるべき予算を用意するという調整行為を経て決めるべきものだが、予算を切るという発想からしかスタートしていない。計画論の欠如がもっとも大きな問題だった。

各地域の社会資本の維持管理などにこれだけの予算が必要だとか、地域の要望や市町村の意向などを積み上げておいて、その中から削る事業を選び、削った事業は計画上の位置づけを明確にしておくという作業を行ったうえで、削減を決めるのなら理解できるが、総論で予算を削っている。この10年、15年間は計画論を捨ててしまっている。計画論なしにインフラ整備を行うのは、あり得ないことだ。そこに根本的な欠陥があった。

それをもう一度やり直さないといけない。そのためには、日本でどの程度、社会資本整備に投資すべきか、その中身を含めて議論の積み上げが必要だ。積み上げの原点は各地域にある。うちの地域は、5年後、10年後にはこうしたい、そのためにはこのようなインフラが必要だという計画がないといけない。

明確な計画をもたない地域は放置しておく。そうすれば、地域間の競争になる。そこには地域の政治力の重さが反映され、住民が首長を選ぶ際の判断材料にもなると思う。しかし、いまの日本は計画性をもって事業を進める態勢にない。それをまず直すことに私の問題意識の原点がある。

--全中建は、市町村の仕事を中心に成り立っている小さい業者の集まりだ。いい仕事をして、災害が発生すればしっかり対応するなど地域のために頑張っている。一般競争入札が一般化したが、中小業者の間では、指名競争入札の復活を望む声が多くなっている

■一条文の規定だけを忠実に守る発注者
 入札契約制度も間違っている。契約する場合、売り手は高く、買い手はできるだけ安い価格でという思惑が入り混じって、交渉して価格が決まるのが市場原理だ。公共工事の契約は、この市場原理とかみ合っていない。

会計法や地方自治法は、もっとも安い価格の業者と契約する規定になっている。したがって、品質には配慮しなくてもよい、悪ければ施工者に注文をつければいいという考えで運用している。価格を安くするには、入札に参加する業者数を増やせばよいと安易に考え、100社、200社と参加させている。

公共工事の発注者には、法律の一条文を忠実に運用すればいいという考えがどこかにあって、それに従って国や自治体はやっている。

この「安ければ安いほどいい」という、いまの入札制度の原点が間違っている。本来、いい契約を結び、いい仕事をするにはどうすればいいかという考えが、人間の知恵としてある。その知恵を無視して、明治時代に制定された法律どおりに運用するのが正しいこととして、馬鹿げた運用を続けてきた。

その原点が変わらない限り、現状の改革はできない。国民の税金を使っているので、きちんと仕事をしないといけない、無駄に使ってはいけない、品質の優れたものをつくって将来に残すということは、誰もが思っていることだ。そのためには、どのような契約方法が最適かを考える必要がある。

ところが、業界の実態を踏まえた契約方法を考えずに、法律の一条文の規定を忠実に守って運用すればいいという点からスタートしているので、すべてがうまくいかない。

現在の仕組みでも、仕事が増えているときには安値受注をする業者はいないので、問題は起きないが、デフレに入って問題の弊害が一気に噴き出してきた。安値で受注して経営が苦しくなり、従業員の給料を大幅に引き下げ、それが原因で若い人も入ってこないという悪循環に陥った。建設業をつぶしたいと思っている人は別だが、存続させたいと思う人は考えなければならないことだ。そのことに発注者は本質的に気づいていなかった。個々の発注者は狭い範囲で少しのお金しか扱っていないので、ほかのことは知らない。自分の世界に閉じこもって全体を見ようとしない。

■「一般か、指名か」は常識の範囲で
 目先の利益にとらわれている。これも人間の陥りやすい欠点だ。財政事情が悪化しているので、財務当局も安いことはいいことと黙認し、それで二重三重に悪くなった。

その中で一般競争入札か指名競争入札かは、常識の範囲で考えればいいことだ。世の中には常識、規範というのがあって、その常識にもとづいて法律が成り立っているのに、発注者は法律の条文の世界だけに入り込んでいる。法律の論理だけで突きつめていくと原点を忘れ、馬鹿げた結論になる。それが200社もの入札参加やくじ引き入札につながっている。

安値受注を排除するため、最低制限価格の引き上げを求める声があるが、それでは問題の解決にはならないと考えている。もちろん多少の改善にはなる。しかし、それは傷口にテープを貼るようなものだ。傷そのものができないように元のところを変えないといけない。

会計法、地方自治法の考え方を変えるための法整備を行うことについて、ようやく発注官庁の理解が進んできた。総務省、財務省、国土交通省もわれわれと問題意識が一致した。それで条文をどのように変えるか、佐藤信秋議員が座長となったプロジェクトチームを設けて、検討している。

ここでは法律を根本から変え、常識で考えていい仕事ができる仕組みをつくりたいと考えている。それは、納税者にとっては税金が無駄なくきちんと使われる、発注者にとってはあまり手間がかからず実行可能な方式、施工業者にとってもきちんと仕事をしてそれを評価してもらえるというように皆がよくなる方法を探す。そのための条文はどのような規定にしたらいいかという常識的な当たり前の作業を進めている。

--自公与党が次期国会に提出しようとしている法案……(3面参照)

 個人が家を建てるときと基本的には同じ考えだ。

--腕のいい大工さんにいかに安く仕事をしてもらうかということを考える