八戸建協との意見交換会開催

適切な賃金支払いの取り組み求める/生活水準向上、若年者の入職増加に不可欠

全国中小建設業協会は、技能労働者の適切な賃金の確保と社会保険への加入促進の周知徹底を図るため全国7地区で会員との意見交換会を開催するが、その初弾となる八戸市建設業協会会員との「公共事業の適切な執行に係る意見交換会」が10月17日、青森県八戸市の八戸プラザホテルで開催された。松井守夫会長が適切な賃金の支払いは技能者の生活水準の向上、若年者の入職増加につながる対応として、会員企業における取り組みを強く要請した。

同日の会議には、本部から松井会長と押川専務理事、八戸建協からは寺下一之会長ら19名の会員、講師として東北地方整備局の須田健介建設産業調整官が出席した。

冒頭、松井会長があいさつ。東日本大震災への見舞いと復旧・復興事業への取り組みに謝意を表した後、「公共事業予算が削減されつづけたことで、技能労働者が減少した。このままでは業界自体の存続が危うくなっている。担い手確保のため、行政は今年度、労務単価を全国平均15%、被災地21%と大幅な引き上げを実施した。業界としてこれに応える必要がある。労務賃金は他産業に比べまだまだ低い水準にある。適切な賃金が支払われ、社会保険に加入することで技能者の生活水準が上がり、それが若年者の入職増加につながる。今回の機会を逃すと業界の今後がないとの思いで事に当たる必要がある」と述べ、適正な賃金の支払いと社会保険加入への取り組みを強く要請した。

さらに「正副会長会議、理事会で周知するための方策として、意見交換会の開催、アンケートの実施を決めた。会員の生の声を聞き、地域の現状を把握するために実施するが、趣旨を理解して協力してほしい。皆さんの貴重な意見は、行政に届ける。中小建設業界をめぐる情勢は依然厳しいが、こうしたときこそ会員が一致団結して地域の雇用確保や住民の安全・安心を守るため、社会に奉仕する力強い地場産業を目指して努力したい」と結んだ。

つづいて寺下八戸建協会長が「本部会長や地方整備局の幹部と意見交換はめったにない機会であり、有意義な会議にしたい」とあいさつした。

この後、須田建設産業調整官が「建設産業の今後の取り組み」をテーマに講演した。

同調整官は、技能労働者の処遇の低さが若年入職者減少の一因となっており、業界の構造的な問題といえると前置きしたうえで、建設業の現状、労務賃金の支払い、社会保険加入に向けた行政や業界の動きの現況などを説明した。

その中で、約2割を占める技能者は10年以内にその大半が引退するが、一定の能力を備えた技能者を育成するためには、10年程度の時間がかかることから、若年入職者の確保が喫緊(きっきん)の課題であること、9月26日に開催された、全中建も加入している社会保険未加入対策推進協議会の第3回会合で申し合わせを行い、法定福利費を負担するための標準見積書の一斉活用が始まったことを明らかにした。

申し合わせは、関係者間で法定福利費を内訳明示した標準見積書を提出する環境づくりに取り組み、元請企業は下請企業との契約で見積書の提出を尊重するとともに、下請企業は元請企業に見積書の算定根拠を説明し、自社や外注先の技能者を社会保険に加入するように取り組むという内容。

同調整官は「今後、この申し合わせに従った取り組みが進む。ぜひ対応をお願いする」と要請した。

須田調整官と八戸建協会員の間では、次のような質疑応答が行われた。


Q 技能者の確保のために米国のユニオン制や人材派遣業の導入を想定しているのか。
A そこまでは考えていない。技能者確保については、担い手確保の検討会を設けて検討している。

Q 技能者を育成するための費用はどのように確保するのか。
A 検討課題だと認識している。

Q 地方自治体の工事の発注量が多い。労務単価引き上げの通知は済んでいるのか。その受け止めはどうか。
A すでに通知している。連絡会等でも要請しているので、労務単価の引き上げは広がっていくと思う。まだ引き上げていないところがあれば知らせてほしい。

Q 標準見積書の妥当性を検討したのか。専門業者に必要以上に有利な内容になっていないか。
A 国交省で各専門工事業団体からヒヤリングし、内容を精査している。

Q 昨年11月から施工台帳に社会保険の加入を記載する欄が設けられたが、それを知らない発注者がいる。周知をお願いしたい。また、標準見積書の記載内容について細かな算出根拠の明示を求められるが、積算額と見積もり額の違いを理解していない発注者がいるので指導してほしい。
A 検討します。

Q 賃金支払いも社会保険加入も落札価格が大きく影響する。予定価格より低い価格でないと落札できない仕組みがあるうえ、ダンピング受注が多い。その影響を受けて下請企業は社会保険に加入すると経営が維持できないという実態がある。現状のままでは15%の労務賃金のアップは、厳しいのではないか。
A 今年の労務費調査が行われるが、それに労務単価引き上げの結果が反映されないと引き上げたことの意味が失われる。ダンピングがあると全体の価格が下がって、労務単価の引き上げが実現できない。ダンピング防止対策はしっかり講じていく。


こうした質疑応答の後、押川専務理事が法定福利費の確保、労務単価引き上げに逆行する発注者の歩切りの調査に協力するよう要請した。