「国土強靭化--日本を強くしなやかに」その4

稲むらの火--濱口梧陵に学べ

最終回の4回目にご紹介するのは、作家・大下英治氏の講演「稲むらの火--濱口梧陵(はまぐちごりょう)に学べ」です。

安政の大地震(1854年)で津波に襲われた和歌山県広村(ひろむら)(現・広川町)。このとき、庄屋の濱口梧陵は村民を高台へ避難させるため、大切な稲むらに火をつけ、村民が高台の稲むらのあるところに来るように仕向け、村民を大津波から救った。

この史実をヒントにして物語『生き神様』を創作したのがラフカディオ・ハーン(小泉八雲)。その物語が小学生向けの教材『稲むらの火』として編集され、昭和12年から10年ほど日本全国で読まれたようです(インターネットで検索して『生き神様』を実際に読んでみましたが、サスペンスタッチで表現されており、とても面白かったです)。

梧陵が火をつけたのは津波を予知してではなく、暗闇の中で村人に安全な避難路を示すためであったなどの事実と物語や教材との違いはもちろんあるようですが、いずれにしても瞬時の判断力は、まさに神がかり的です。

さらに梧陵の本当にすごいところはその後、被災したふるさと広村を復興するための手立ての数々です。被災した村の人たちへの住まいの提供から始まり、これからの村の安全と村人の働き口を兼ねた堤防づくり、壊れた橋の架け替え、子どもたちの教育のための塾の創立などなど……。現在の公共事業として行われるようなことを自らの破産の危機をものともせず、私財をなげうって行ったとのことです。村がよみがえったのはもちろんのこと、これにより、後の広川町では昭和の東南海地震、南海地震による津波に際して被害を免(まぬか)れたとのこと。

まさに、公の精神です。いざというとき、自分にはそこまでの覚悟ができてないかも、と読みすすめながら、思わず自己嫌悪状態に……。

そんななか、講演録後半の質疑応答の場面での二階俊博先生のコメントが。先生が地元、和歌山の成人式に出席したときのことを話されています。

「成人式というとワアワア騒ぐのが普通のように伝えられておりますから、あんまり出ていなかったのですが、今年出てみまして、何を話したか。私は『稲むらの火』の話をしたんです。『稲むらの火』の地点とそんなに遠くない地域では必ず『稲むらの火』、濱口梧陵というのはどんな人かとか聞かれる。それに答えられなかったら、この地域出身の者としては笑われちゃう。……(会場は)シーンと静まり返って、私もびっくりするほどコトッともしないんですね」

若者たちの気持ちに負けないようインフラ整備にあたる者として、心構えを今1度磨いていきたいと思わされました。