「国土強靭化--日本を強くしなやかに」その3

われわれ建設業の役目

3回目にご紹介するのは、前日本経団連会長、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長の講演「国こく土ど強きょう靭じん化かに向けて」です。

経済界のリーダーとして、わが国の進むべき道を「基本理念」「考慮すべき要素」「具体的課題」の3つの柱に分けた、とてもわかりやすい内容でした。

まずは「基本理念」。福沢諭吉の教育に関する方針である「先(ま)ず獣身(じゅうしん)を成(な)して後に人心を養う」(幼いころは体づくりに専念し、その後、勉学をさせるといった意味)を例にとり、国に当てはめて考えてみる。わが国の進むべき道として考えられるのは、科学技術立国、通商貿易立国、環境立国などさまざまな夢が広がりますが、その実現のためには、その土台となる強靭な国土が不可欠です。そして、危機対応にあたってはスポーツなどの世界でいう「心・技・体」のバランスが大切。危機対応にあたる人の精神力や胆力(たんりょく)が「心」、組織や法律などのソフト面は「技」、インフラなどのハード面が「体」(インフラ整備にたずさわる者として、このように期待されていることに、あらためて身が引き締まります)。

次に「考慮すべき要素」。日本は世界にまれにみる自然災害の多発国であることと、人口減少が進行していることは基本的な要素ですが、さらなるポイントとして「21世紀世界経済の中心がアジアにシフトしつつあり、その中で日本はきわめて有利な地政学的位置を占めている」というポジティブな視点を挙げています。

そして、このような要素を踏まえての「具体的課題」。1つ目は災害に強い経済社会の構築。普段は住民の日常生活に役立ち、緊急時に防災の機能を発揮するデュアルユースの考え方を採り入れたインフラ整備がコスト面からもとても有効(実際、東日本大震災では海岸沿いの高速道路が津波を防いだ)。また、首都圏一極集中の解消もリスク回避策として必要。そのためには、道州制導入も有効な手段。道路整備が県境で途絶えるなどのミッシングリンクの解消にもつながります。

2つ目は国際競争力の強化。特にアジアを意識したネットワーク拠点の整備。わが国のインフラの競争力が低くては、いくらアジアが高い経済成長を遂げても取り残されるだけ(せっかくの地政学的有利さは生かさないと、損ですよね)。

国の目指す方向を、インフラ整備を通じて下支えをするというのが、われわれ建設業の役目。

「発展するアジアの人たちに大いに立ち寄ってもらえるような観光立国を目指した日本の姿。--それは四季によって鮮やかに変化する日本の美しい風景や地方色豊かな文化を、機能的に整備された交通網を駆使して北から南まで存分に楽しんでもらえるところ」。この講演録を読みながら、そんな美しい日本の国づくりを建設業が担っている様子を心の中で夢見ていました。