予定価格決定に一工夫

日原建流審が講演

国土交通省の日原洋文建設流通政策審議官が「最近の建設業をめぐる諸情勢」をテーマに行った講演の要旨は、次のとおり。


政府は、金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」からなる「日本経済再生に向けた緊急経済対策」をまとめた。これを受けて平成24年度補正予算が編成され、約13兆円の財政支出が行われる。

補正予算の中には建設業に対する支援のための予算が計上されている。国や地方自治体と災害協定を締結している企業(団体が協定を締結している場合はその会員)がショベル系掘削機、ブルドーザー、トラクターショベルを購入する際の資金の調達金利を初年度に限り3分の2、上限4%を補助する。

今年度末で期限切れとなる建設業金融円滑化基金と建設業債権保全基金はともに平成25年度末まで1年延長するとともに、基金の積み増しを行い資金調達の円滑化を図る。

増大する公共事業の迅速かつ円滑な施工を確保するための措置を講じることにした。発注者も人手不足で工事発注に支障が生じるおそれがあるので、分割発注をせずに発注ロットの規模を確保し、地元企業には上位ランクの工事に参加できる配慮をしながら発注するよう、地方整備局と地方自治体へ通知した。

技術者不足に対処するため、発注者が異なっても5キロ以内の同種工事、同一の発注者による一体性、連続性のある工事は主任技術者などの兼務を認めることにした。被災地特例として実施していた措置だが、問題が生じていないので全国的に実施することにした。

また、技能労働者を遠隔地から調達した場合、赴任旅費や宿泊費等の追加コストを設計変更して支払う措置のほか、資材を遠隔地から調達した場合、設計変更で運搬費等の追加コストを精算払いする措置を全国的に実施する。

建設技能労働者は23年7月頃から不足が顕著になってきた。賃金は最近、建築職種で高騰し、2割から5割も上昇している職種がある。土木は現在のところ上昇率が小さいが、今後、上昇すると思われる。
しかし、公共工事設計労務単価は全体として低下傾向にある。その理由を聞いてみると、もともと赤字で受注しているため、元請からの支払いがあっても材料代への支払いに充あてるので、ただちに賃金に反映できないとか、受注見通しが立たない中では賃金を上げられないという事情もあるようだ。労務単価がアップしないと予定価格が上がらない。このままでは入札不調が増える。この事態を回避するため一工夫が必要と考え、勉強している。

資材や労務費などの価格変動が著しい場合、通常の積算では市場価格を予定価格へ適切に反映することが困難なので、見積もりによる積算を積極的に活用することにしている。しかし、各発注者が独自の判断で実施することになるので、あまり活用されていないようだ。

昨年11月から社会保険への加入対策を実施しているが、目立った混乱は起きていない。社会保険への加入は、慎重、確実に不退転の決意で進めていきたい。

東日本大震災の被災地は、道路や港湾など公共施設の復旧・復興事業から高台移転などまちづくり事業が本格化する。すでに移転計画のまとまっている地区も多い。高台移転は住民の生活がかかっているので、期間が限定され、施工が間に合わないとは決していえない状況にある。

補正予算を消化できるのかという質問を受けるが、できると回答している。その理由は、補正予算は国民の生活と安全を確保するための予算であること、「15カ月予算」といわれる中で、補正予算が執行できないと25年度の本予算が削減されかねないからだ。補正予算の工事は高齢者を活用してでも実施できるが、長期的には若年者の入職を増やすことが不可欠であり、そのためにも安定した本予算確保への配慮が欠かせない。補正予算は消化できないとはいわないでほしい。

このあと質疑応答が行われ、「デフレスパイルのもとで調査をして労務単価を決めれば安くなるのは当然だ。政策的に労務単価を決められないのか」との質問に対して、同審議官は「復旧・復興工事の増加で労務費が上向き傾向にあるが、予定価格の上限拘束性がふたをして上がりにくい状況にある。労務費が下降局面にあるときに、政策的な単価を採用するのは難しいが、労務費や資材費が高騰しているときに、入札不調が発生しないように予定価格を先取りして上げる方法がないかと思っている」と語った。