担い手確保・育成で意見交換 建設業振興対策委員会

長福国土交通省建設市場課専門工事業高度化推進官が講演

建設業振興対策委員会(小野徹委員長)が12月6日午後、東京・大手町の朝日生命大手町ビルで開催され、国土交通省建設市場整備課の長福知宏専門工事業高度化推進官から同省が検討を進めている「担い手確保・育成のあり方」について説明を受けた。

同日は冒頭、小野委員長が「平成4、5年の新聞を読み返してみると、建設業での人材確保は建設投資がピークを過ぎたころから大きな課題になり、技能者確保・育成への助成金の活用、技能検定の活用、技能者の評価、さらにはマイスター制度の創設などが話題になっていた。現在特に若者の入職が課題になっているが、建設業のイメージがよくない。そうした中で将来的に建設業が継続できるように、技能者に十分な所得を確保するなどさまざまな対策が必要とされている。このため国交省は「担い手確保・育成検討会」を設置して対策の検討に着手した。私が委員となっているので、皆さんの意見を聞いて、それを検討会の場に反映させていきたい」と語った。

このあと、長福専門工事業高度化推進官が「担い手確保・育成検討会」での検討課題、検討の方向性などについて講演した。


同推進官は、最初に建設業が置かれている経営環境の厳しさについて数字を示してふれた。「建設投資がピーク時と比べ約5割減となる一方、許可業者数は約1割減にとどまり、建設業は過剰供給構造となって、受注競争が激化している」「技能労働者・技術者の入職が激減している」「地方自治体の発注工事で低価格入札の発生率が高い」「建設業就業者の高齢化が他産業を上回るペースで進んでいる」「公共工事設計労務単価がピーク時の3分の2の水準まで落ち込んでいる」ことなどを紹介した。

◆技術承継に懸念

このあと、国交省が取り組んでいる「担い手確保・育成」に関する検討方向、ポイントなどについて次のように語った。
「建設産業の再生と発展への方策2011」では「技能労働者の雇用環境の悪化が進んでおり、これが若年入職者の減少と就業者の高齢化の一因となっていると考えられ、将来的な技能労働者の不足や、技能・技術が承継できないといった懸念が増している」と述べ、さらに、平成24年7月にまとめた「方策2012」でも「若年入職者の減少と高齢化が著しく進行しており、優秀な技術者や技能労働者の確保・育成が喫緊の課題となっている」とした。

◆人を大切にする企業

「建設産業の再生と発展の方向性」では国土づくり、地域づくりの担い手として建設産業がめざすべき目標を、将来的にも地域を支え得る足腰の強い建設産業の構築と、維持管理やリフォーム、解体など建設産業に求められる多様なニーズ、役割への対応とした。そのために当面講じるべき対策として「公共工事の入札制度の改革等」「総合的な担い手の確保・育成支援」を取り上げた。

入札制度改革の中では、専門工事業者などを評価する新たな仕組みの導入を検討する。

この制度は技能者をしっかりと雇用し、技能を承継する建設産業を構築することで、長期間にわたって公共工事の品質を確保することを目的に設けるもので、公共工事の発注者の責務として元請企業の選定にあたり、人を大切にする施工力のある専門工事業者等を下請に活用する元請企業を評価する仕組みである。

そのための評価の方法や主体、評価対象項目、評価の活用方策などを検討するが、評価対象項目としては登録基幹技能者の雇用者、若年層の継続的な雇用や育成の状況、社会保険等の加入状況が考えられる。

「担い手確保・育成検討会」は発展方策の提言を受けて設置したもので、(1)専門工事業者などの評価、(2)技能労働者技能の「見える化」、(3)登録基幹技能者のさらなる普及、(4)技能労働者に対する教育訓練、(5)戦略的広報の5点について検討する。

◆技能の見える化

技能労働者技能の「見える化」は、技能労働者が保有する施工力にかかわる資格や研修履歴、工事経験、社会保険等への加入状況などをIT技術により管理・蓄積し、必要な主体による閲覧を可能とする仕組みだ。社会保険等の加入状況の事務手続き効率化にも資することが可能である。誰が入力するのか、情報を誰が収集するのか、個人情報の保護といった課題がある。

登録基幹技能者のさらなる普及は、登録基幹技能者が最上級の技能労働として現場に十分普及していない、業界においてその役割にふさわしい処遇が受けられていないといった問題があることから、直轄工事では総合評価の際に登録基幹技能者を加点評価しているように、これを地方自治体や民間工事も含めてその普及や活用を図ることを目的にしている。

技能労働者に対する教育訓練は、新規学卒者の入職対策、中途採用対策、入職後対策に分けて実施する。

戦略的広報は、建設産業が正しく理解されず誤ったイメージをもたれていることが新規入職者減少の要因となっているところから、若者をターゲットに業界が一体となって広報活動を展開することを目的にしている。

◆努力する企業が淘汰

このあと、意見交換が行われ、その中で「落札率が高いとすぐに談合と批判される。この風潮を是正するためにも戦略的広報に期待する」「設計労務単価は実態調査を受けて決められるが、予定価格以下でないと落札できないので、労務者に支払う賃金は設計単価より安くなる。若者も高齢者も同じ賃金では、若年者が入職しないは当然だ」「予定価格制のもとでは労務賃金のデフレスパイラルは止まらない。労務単価は実態調査によらずに、政策的に決める必要がある」「過当競争、コスト競争が続く中で経営力、技術力を高める努力を続ける企業が淘汰されている。民間工事は将来のこともあるので価格だけでは決めない、高い価格でも契約する。公共工事も安ければよいということではなく、例えば品質保証価格として請負金額を決めることも必要ではないか」などの意見が出された。