【全中建若手経営者部会】被災地支援制度の全国展開を検討

青木国土交通省建設業課長

全中建若手経営者部会の第一部で国土交通省の青木由行建設業課長が「最近の建設業界をめぐる諸問題について」をテーマに行った講演の要旨は次のとおり。


建設業の経営環境は一段と厳しくなっている。その要因は、建設投資の急激な減少にある。平成23年度の建設投資額は42兆円で、ピーク時(同4年度)の84兆円から半減した。
この間の許可業者数は53万業者から48万業者と9%減にとどまり、しかも大規模工事を担う特定建設業者は14%も増加している。建設企業はこうした中での競争を強いられ、受注競争が激化し、受注高の減少、ダンピング受注、企業の利益率の悪化、人員の削減などが進み、地域維持や災害対応などで地域を支える建設企業が疲弊(ひへい)している現状にある。

◆進むダンピング対策

また、ダンピング受注、下請企業へのしわ寄せなどから技能者の労務単価の下落など就労者の労働環境が悪化し、入職者の減少、高齢化が進み、現場の施工機能の低下、人材の確保、技能の承継、安全確保に大きな懸念が生じている。

これらの課題に対応する目指すべき方向は、発注者から元請業者、元請業者から下請業者、技能労働者まで持続可能性を確保するために必要な資金が流れることにある。そのためにはダンピング受注防止、下請へのしわ寄せ防止、人材の育成・確保が必要である。

建設業の営業利益率は低下が続き、1%程度しかなく、小規模業者はマイナスになっている。販管費は上昇し、外注費の圧縮が進み、下請業者が厳しくなっている。作業員に適正な賃金の支払いが行われないと労務単価が上がらない。予定価格が上がらないことをおそれている。

公共工事の設計労務単価は低下傾向にあり、平成9年に比べ3分の2の水準にまで落ち込んでいる。ただ、23年度に比べ24年度は0.9%アップし、多少改善の兆しがみえる。需要が伸びていない中での上昇は、人手不足が深刻化したことを物語っている。

地方自治体における土木部門の職員数は建設投資ピーク時(平成4年度)から約25%も減少した。事業量が減っているので、職員数が減るのはやむを得ないが、そのために現場に出ることが少なくなって、職員のスキルアップを図ることが厳しくなっている。発注者の担当者が現場を知らないため、設計変更がスムーズに行われないという声も聞く。

こうした事態を打開するためにやるべきことはいろいろあるが、緊急的に必要なのはダンピング対策と考えている。

都道府県の発注工事で、低入札価格調査基準価格、最低制限価格を下回る低価格入札の割合は年々増加している。しかし、24年、入札契約適正化法(入契法)の指針を改正し、ダンピング対策を規定した。また、総務大臣と国交大臣が地方自治体に要請できる規定も設け、これを受けて要請通知を行ったこともあり、予定価格の事前公表の廃止など自治体のダンピング対策は確実に進んでいる。国の基準を上回る制限価格を設定する発注者も現れている。

◆経営計画の立つ契約方式

社会資本の維持・管理や除雪、災害応急対策などの地域維持事業の担い手の確保が困難となるおそれがある場合に包括して発注する地域維持型契約方式を23年12月に導入したが、実績が少しずつ上がっている。この契約方式は緊急的に実施しているが、これをどこまで広げるのかが今後のポイントになる。経営や受注の将来見通しが持てないようでは雇用確保、人材の育成へのインセンティブが働かないので、この制度を活用することで受注の見通しが立てられるようにしたい。

多様な契約方式の活用について検討を開始したが、CM制度など被災地への支援として講じている制度を汎用性(はんようせい)のある制度として展開することを検討課題としている。宮城県と岩手県では、UR(都市再生機構)によるCM(コンストラクション・マネジメント)方式を活用した復興まちづくりモデル事業が行われている。この方式は、マンパワー不足によって大量の復興事業を行えない市町村に代わってURが業務全般の総合調整の委託を受け、そのうえでURはCMr(コンストラクション・マネジャー)を選定した事業を行う。その際、工事施工は地元企業が請負うようにし、下請業者に支払う金額は監査法人のチェックを受けて発注者に提出、これを受けた発注者はかかった費用を全額請負業者に支払う。CMrには別途フィー(報酬)を払うという方式である。これを被災地以外の地域に拡大することを検討している。

◆人材育成の下請を活用

総合的な担い手確保と育成支援策を検討するため、「担い手確保・育成検討会」を設置した。専門工事業者等評価制度などの課題を検討する。この評価制度は、下請業者が人材を抱えるとコストがかかり、競争上で劣位に立つところから、人材を抱え、育成する企業を元請が下請として活用するための仕組みである。

わが国の公共投資の水準は欧米諸国に比べ高いといわれるが、防災関係投資が大きいこと、急峻(きゅうしゅん)な地形などに応じた構造物のコスト増を勘案すると、主要先進国を下回る水準にある。平成25年度の国交省概算要求額は全国防災関係経費を含む公共事業関係費が4兆424億円、これに東日本大震災の復旧・復興事業の公共事業関係費5570億円を合わせると約5兆円となる。

金融円滑法が25年3月で期限切れになる。金融庁は、期限切れになっても金融機関の姿勢に変化はないといっているが、貸付条件変更を申請した企業のうち「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」を作成していない企業が5割程度あり、このまま期限切れを迎えると、計画を作成していない企業の債務者区分が1ランク下がるといわれ、しっかり対応することが必要だ。

工事請負契約等に係る印紙税の特例措置(軽減割合10~25%)が25年度まで延長されるが、建設工事は重層請負構造の中でその都度課税されるので、建設業の負担は大きい。26年度以降については、消費税率の引き上げを踏まえた負担軽減措置を講じたい。

このあと意見交換が行われ、「労務単価が実勢を反映していない。労務単価がアップするよう何らかの対応を図ってほしい」「建設業許可を申請すると窓口規制が働かないのですぐ許可が下りる。これでは業者数は増えるばかりだ。許可を受けても一定期間は公共工事の受注はできないという仕組みにしないと業者数は減らない」といった意見が出された。