【全中建若手経営者部会】課題はダンピング対策の実効性確保

望月国交省建設業課入札制度企画指導室長

国土交通省建設業課の望月一範入札制度企画指導室長が「入札契約制度に関する諸問題」をテーマに行った講演の要旨は次のとおり。


公共工事の落札率は、低下が続き、平成22年度の調査では国交省直轄工事、都道府県工事とも89%台の数値となっている。
ダンピング受注は、建設業の健全な発展を阻害(そがい)し、工事の手抜き、下請へのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底につながりやすいという弊害がある。したがって、その防止が大きな課題である。

◆自治体の多くが事前公表

ダンピング防止対策としては、低入札価格調査制度の活用と予定価格の事前公表の取りやめの2つがある。事前公表は、建設企業の見積もり努力を損わせ、最低制限価格を類推できるので同価格となって、くじ引きによる落札件数が増加するといった問題が生じる。

低入札価格(低入札価格調査基準価格または最低制限価格を下回った応札価格での入札)の発生率は、22年度で直轄工事が3.0%であったのに対し、都道府県工事では28.5%とかなり高い。市町村工事となるとさらに高い数値になるのではないかと推測される。

23年9月現在で予定価格の事前公表だけを行っているのは、都道府県で18団体、政令指定都市で6団体(3割)、市区町村775団体(52%)となっており、市区町村の半数以上が事前公表を行っている。また、低入札価格調査制度も最低制限価格制度も未採用の市区町村は254団体(14.8%)あり、ダンピング対策が講じられていない。

低入札価格調査基準価格は、20年度以降3回にわたって引き上げているが、都道府県の中で23年4月の公契連モデルより高い基準を設定しているのが8団体、同じ水準が27団体。最低制限価格では、23年4月の公契連モデルより高い水準に設定しているのが10団体、同じ水準が20団体となっている。
建設産業戦略会議がまとめた「発展方策2011」では「予定価格を事前公表すると最低制限価格または低入札価格調査基準価格を容易に類推できるようになり、これらの価格付近に応札価格が誘導される形で応札行動にゆがみが生じるとともに、この結果、事前公表のみを採用している都道府県では、事後公表のみとしている都道府県と比べ、くじ引き落札の発生率が2.4倍と高くなっており、依然として事前公表の取り止めが重要な課題」とした。これを受けて、23年8月に閣議決定した入札契約適正化法(入契法)の適正化指針では、予定価格、調査基準価格、最低制限価格の契約締結後の公表を定めた。さらに総務大臣と国交大臣は同月、知事と政令指定都市市長宛に入契法にもとづく同趣旨の要請を行っている。

◆「経営の維持」を目的に

国交省は、総合評価方式において、調査基準価格を下回る応札者には調査を厳格に行い、基準をクリアできない場合は、施工体制評価点30点を減点する施工体制確認型評価方式を採用している。この調査の対象になると、基準をクリアできずに失格となっており、この制度を他の発注者に広めていくことも課題だ。

山口県は24年5月、低入札価格調査基準価格制度の目的に「建設業の継続的な経営の維持」を加え、計算式の一般管理費等を従来の30%から70%引き上げる改正を実施している。

「発展方策2011」を受けて、23年12月から地域維持事業の担い手の確保が困難となるおそれがある場合、包括して発注する地域維持型契約方式を採用した。この方式の都道府県、政令指定都市の実施状況をみると、地域維持事業の契約の包括化を10道府県、1政令都市が実施済み、地域維持型JVの運用基準を4県が策定、地域維持型JVを参加資格要件とした入札を実施したのは4県となっている。

包括契約を導入した青森県は、メリットとして年間を通じた維持管理体制の確保、発注業務が減ることによる事務の軽減、雇用の平準化と安定的な確保、計画的に人員や機械が確保され、経営が安定することをあげている半面、発注業務を集約したことによる新たな受注機会の減少をデメリットとして指摘している。

この制度は23年12月にスタートしたばかりであること、そこまで困っていないといった事情から、一気に拡大するところまでいっていないが、建設企業が地域から消えないように、業界の意見を聞きながら制度を改善していきたい。