図書紹介 「国土強靱化--日本を強くしなやかに」その1

現代日本へ緊急提言

2012年春、国土強靭化研究所から「国土強靭化(きょうじんか)――日本を強くしなやかに」が発行されました。現代日本への緊急提言ともいうべき書籍です。すべての人に読んでいただきたい、とても本格的で面白い内容なのですが、621ページにもわたる大部のため、忙しい方々にはなかなか手が出にくいかもしれません。このコーナーでは、同書のエッセンスを数回にわたってお伝えしていきたいと思います。
第1回は石川好先生の講演録「国土強靭化のカギは日本海側にあり」から。


これまで「国土のあり方」というと、高速道路ネットワークであるとか、経済効果はどうかとか国内の議論が中心になっていましたが、国際的な力学の観点から、どうやって日本を強くしていくかという新鮮な切り口が本書の「国土強靭化」論です。

日本はいま、北方領土、竹島、尖閣諸島といった領土問題を抱えています。それぞれを主張している国の拡大意欲が原因だと思われますが、別の見方として世界地図をユーラシア大陸の側から眺めると、海(太平洋)へ出ようと思うものにとって日本はふたをかぶせたような形になっており、とっても厄介(やっかい)な国であることも要因としてあるようです(たしかに島まで含めると日本列島はとても長いですね。でも、地図はいろいろな角度から見てみると結構面白い)。

わが国は大正時代あたりまで、新潟などの日本海側が経済の中心だったのが、その後、日本海に臨む各国の政治体制の変更などが影響して、経済的な拠点づくりは太平洋側に集中しました。そして、わが国は日本海という視点を欠いた海洋国家となって現在に至っています。

しかし、ロシアや中国が間近に迫ってきているいま、いつまでも知らん顔はできません。もう一度日本海側を見直し、インフラ整備、産業の拠点づくりを考えてはどうか。これまでアメリカを中心とした環太平洋の一員としてしか大陸を見てこなかったが、アジアの一員として大陸を見ようとすれば、対応もきっと変わってくるはずです。

そこで、さまざまな提案が……。ウラジオストックから最も近い秋田県男鹿半島は昔、ロシアとの定期便があり、窓口でした。その男鹿半島の港を復活、そして、そこだけに限らず大陸との懸け橋となる拠点都市づくりを進めてはどうか(活気あふれるにぎやかな街の様子が思い浮かびます)。

次に米軍基地の問題。沖縄の負担を減らすため佐渡島へ基地を誘致してはどうか。飛行場は残っているし、人口は少ない(なかなか斬新(ざんしん)な発想ですが、なるほどと思わされました。講演でもふれられていましたが、トキの保護の問題は残るかもしれません)。

さらに、あらゆる災害を想定し、日本海側に太平洋側との相互バックアップ体制を構築して経済活動の安定化を図る、などなどの提案。日本海の大切さを日本人が気づかなければ、さびれていくばかり、ぜひ皆で目を向けていきましょう、という内容でした。

国土強靭化とは、単に災害に強い構造物をつくり、経済効果のための投資をするだけのことではなく、人びとが安全・安心、そして幸せに暮らしていくための国土整備を広く世界を視野に入れ、長いスパンで考えることである、と再認識させられました。