指定席

社団法人全国中小建設業協会広報委員
株式会社加藤建設代表取締役社長加藤徹
五感の中の一つ、「匂い」について

私が子どもの頃に比べて最近は野菜がとても食べやすくなりました。うちの3人の子どもたちも「野菜嫌い」とは全く無縁の存在です(でもまだしいたけは苦手なようですが)。一昔前の子どもたちの苦手な食べ物野菜という感覚だった時代は遠い昔となりました。確かに最近の野菜は食べやすい。その大きな要因の1つに土臭さがなくなったことが考えられます。以前は人参でもごぼうでも強烈な土臭さがいざ食べるときの大きなハードルでした。もちろん私も苦手だったのですが今になってみると、現在のスマートな野菜では何か物足りず、昔ながらの自己主張の強い野菜も懐かしく、ちょっと気になります。

ここまでは味覚の話ですが、「土臭い」という言葉に表わされるように味覚には匂いが大きく関係していると思われます。日本人には強烈な匂いのするチーズが苦手な人が多く、一部の外国の人にとっては味噌汁の香りが我慢できないくらい臭い匂いに感じるというように、それぞれの人や民族の個性の形成にもつながってきました。

何も食べ物だけに限らず、お香の匂いであったり、檜のお風呂のにおいであったり、日本の生活様式や文化として受け継がれてきたものも少し脇に追いやられてきているように感じるのは私だけでしょうか。
「匂い」は人の感性であったり、民族の歴史であったりするものを育んできてくれていたようです。また人間の五感のうち、最も人のイマジネーションを豊かにするのは嗅覚であるという話も聞いたことがあります。そういえば「懐かしい匂い」として思い出すのは何も直接的に匂いを発するものばかりではなく、育った街の匂い、夏休みの匂い、家族旅行の匂い……等々、記憶の中のそれぞれの場面のイメージとしてほんのりただよってきます。

インフラ整備を通じて「暮らしやすい世の中」と「懐かしい豊かさの記憶」を後世に伝えていく私たちの事業にとって、実は人の暮らしの中の感覚としての匂いを伝えていくことも大切なことの1つなのかもしれません。

ちなみに、昨今批判的な表現をされてきた「コンクリート」に対する私の匂いのイメージは「清潔安全」です。