第23回若手経営者懇談会 発表要旨(2)

地域住民のケアも建設業の役割
長谷川順一氏

私の会社は陸前高田市にあり、今回の震災で4名の従業員を失った。岩手県建設業協会の大船渡支部は大船渡市、陸前高田市、住田町の会員で構成され、このうち大船渡市と陸前高田市が津波の被害を受けた。

大船渡市は市役所の建物が残り、防災施設も失うことがなかったので、震災発生直後、大船渡支部長の号令のもとに支部会員が集合し、体制を整え、各行政機関と連携して早期の道路啓開の作業に当たった。

陸前高田市は市役所も防災機能も失い、道路、通信も完全に閉ざされ、陸の孤島状態に陥った。9名の協会員が犠牲になったので、協会としては動ける人だけが動くという状態だった。市役所が機能しなくなったため、各行政機関の職員、自衛隊、消防団と一体となって救護、復旧に取り組む体制を整え、4月までこの体制で作業に当たった。

今回の大震災では、電力不足が全国的な問題になったが、それに加えて被災地では燃料不足と流通網の麻痺も大きな問題となった。人と重機はそろっているが、陸前高田市では全てのガソリンスタンドが流失して燃料が入手できず、作業に当たれない状態が続いた。

また、流通網の麻痺は人の生死を分ける重大な問題だった。物資を持っていきたいが帰りの車の燃料がない、物資を持って行きたくても受け入れてもらえないといった問題が現場では起きていた。県外からの物資は、県が受け入れ窓口になったために、被災地に知り合いがいるのに持ちこめない、道路の通行規制によって被災地に入れないといったことが起こった。

今回の災害には3つの被災があったと考えている。物質的被災、精神的被災、未来に対する被災である。

物質的被災は、土木建築構造物、自然、車両などを失った損害である。

精神的被災は、家族や家屋、仕事を失うことによって、生きがい、働きがいを失い、「心が立つ」状態になれずに、3・11の時点で時が止まっている人がいることである。危惧しているのは仮設住宅に入居してからの自殺、孤独死である。建設業は道路や住宅の復旧だけでなく、こうした人たちのケアにも気を配る必要があるのではないか。

人の命が奪われることは、人の未来と可能性が奪われることである。今回の災害では、道路の両側に建ち並んでいた家が姿を消し、津波が引いた後、そこには亡くなった人が多数横たわっていた。その光景が脳裏に焼き付いている。

大震災では、建設業者は真っ先に救護、復旧に当たり、地元に貢献する立場にあるのだが、今回は「仕事をやめようと考えている」「大切な人が亡くなって仕事をやる気がしない」という仲間が現れるほど、ショッキングな災害だった。結果的には廃業せずにすんだが、立ち直った最も大きな要因は「従業員をどうするか」だった。仕事があるから地元に住む、働きがいがある仕事だから地元にいたいという多くの従業員の思いに応えてのことだった。

復興は形ではなく、人が先ずありきである。建物や道路をつくっても、それを使い、そこに住む人がいなければ復興する意味がない。人は仕事のあるところに集まる。この観点から、今後、建設業界として取り組むことは、建設を通じて被災者の自立・自活支援、雇用機会の創出、復興計画策定への率先的参加である。

建設業は、新しい街は自分たちでつくるという視点を持たないといけない。建設業の利権といわれるのを気にしてのことかもしれないが、どうも積極的ではない。誇りをもって街づくりに参加し、持続可能な街をつくらないと本当の復興にならない。私は異業種の人たちと街づくりを進めるための会社を設立した。実績を残せるように頑張っている。

国、県、市町村が再生エネルギーなどの活用に向けて検討を進めているが、省エネも重要な課題であり、そのためには国民のライフスタイルを変えることも重要だ。そのことも被災地から発信したい。