2012年新春対談 建設業の進むべき方向は……(1)

中小建設業にとって平成24年は、解決を迫られる問題が山積している。先の大震災の復旧・復興、公共事業抑制の打破、契約制度の改革、TPP問題への対応など数え上げたらきりがない。そして、何より瀕死の状態にある自らの生き残りをかけて発言、行動する年にしていかなければならない。公共事業と建設業に対して鋭い洞察力と深い理解をもって、国会で活躍する脇参議院議員と全中建の小野副会長が、新しい年の建設業の進むべき方向について対談した。

脇雅史参議院議員・自由民主党国会対策委員長
小野徹(社)全国中小建設業協会副会長・建設業振興対策委員長
司会
豊田剛
(社)全国中小建設業協会副会長・広報委員長

中小建設業にとって平成24年は、解決を迫られる問題が山積している。先の大震災の復旧・復興、公共事業抑制の打破、契約制度の改革、TPP問題への対応など数え上げたらきりがない。そして、何より瀕死の状態にある自らの生き残りをかけて発言、行動する年にしていかなければならない。公共事業と建設業に対して鋭い洞察力と深い理解をもって、国会で活躍する脇参議院議員と全中建の小野副会長が、新しい年の建設業の進むべき方向について対談した。

豊田:昨年は東日本大震災、台風12号、15号による災害など大きな自然災害に見舞われた。災害復旧・復興については第3次補正予算が編成され、本格的な復旧・復興事業が動き出そうとしているので、復旧・復興の問題とその予算についてうかがいたい。もう一つは、東京以西での大震災の発生が言われている。その対応についても話を聞きたい。

■復旧・復興と並行して経済立て直しを
脇:今回の東日本大震災は、従来の災害と規模、性格において全く異なる災害だ。国交省的な立場から言うと、毎年何千億円もの予算を使って災害復旧事業を行っているが、その内容は、堤防、道路や崖などの破壊された防災施設やインフラ施設の復旧が中心だ。基本的には、国や地方公共団体の管理する施設の修復にとどまっている。

ところが今回の震災は、津波の被害によって生活そのもの、街そのものが失われてしまった。このため、インフラ施設の復旧にとどまらず、街そのものの復旧・復興という仕事になることから、対応もこれまでとは異ならざるを得なかった。それで復興会議を設け、新しい法律を整備した。

街の復旧・復興については、東京のほうで、街を高台に移して整備する構想が打ち出されていたが、それはおかしいだろうと思う。地元の人たちがどういう街にしたいと考えているのか、そういう思いを踏まえて復興事業を進めるべきであって、役所がこうしなさいという話ではないと思う。

そうなると、復興には莫大な資金が必要となる。国は、多額の借金(国債)を抱え、財政がひっ迫しているが、その問題とは切り離して、復興事業に思い切って予算を回すしかないため、別枠で予算を確保している。それが復興債となっている。従来の事業のやり方では対応ができないということで、補正予算、関連法はできたが、事業実施体制の枠組みとなると、どうもはっきりしない。

地元の意見を聞いて事業を進めるため、現地に復興庁の事務所を置き、そこには国や県の出先機関、市町村の担当者、民間人にも入ってもらい、復興計画を策定する。そういう仕掛けをつくるべきだと政府に提案したが、まだできていない。

一方、日本全体のことを考えると、デフレ経済を脱却して、経済を立て直すというこれまでの課題が残されている。この間、いろいろな政策を実施してきたが、日本だけがデフレ経済から脱却できないでいる。その大きな要因の一つは公共投資の抑制にある。この20年来の自民党、民主党が講じた公共事業予算の削減策は間違った政策だった。

今後は、震災復興と日本経済の立て直しという両建ての政策を講じていく必要がある。復興事業はデフレ脱却にプラスに作用すると思うが、二つの政策は混同しないで、ともに着実に実施することが大切だ。

豊田:公共事業予算の削減で仕事がなくなり、地域の建設業は疲弊している。復興事業と全国的な国土づくりは一体的に進めていただきたい。

脇:復旧・復興事業は、先ず地元の建設業が取り組み、地元企業でできないものは、大手企業に応援してもらうなど、臨機応変にうまく仕事を回して行うことが大切だ。誰かが仕事を独占するのではなく、全体として建設業の力が結集できたらいいと思う。実際には契約ベースの段階になると大手、地元企業のそれぞれから不満が出ることも予想されるが、長期間続く事業なので発注者がそうした声を聞き、調整しながら業務を進めていけばよい。長くかかる事業なので工夫が必要だろう。

小野:東日本大震災、台風12、15号による豪雨災害など、昨年は天災が多発した年だったが、その復旧に建設業が尽力して、地元建設業の果たしている役割が再認識された年でもあった。同時に災害に強い国土をつくりあげていくことが大切だという教訓を得た1年でもあった。

■国のあり様、地方のあり様を考え直す
脇:日本は災害の多い国であるから、防災対策は重要であることは初めから分かっていた話である。国の施設を管理する国土交通省をはじめ、都道府県の土木部、知事にしても地域の建設業はなくてはならない産業と考えている。

しかし、仕事が減少する中で、地域にとって必要とされる優良な建設業者をどのような方向でどれだけの企業を残していくのかという問題は、自治体が自ら取り組むべき大きな課題となっているのにもかかわらず、民間企業の努力に頼っている。

地域で必要な業者を残すためには発注者の視点だけでなく、それに伴う政策が必要だが、そうした政策がなく、競争だけをさせておけばよいという市場主義がはびこって、建設業を壊し、大変な状況になっているのが現実である。

小野:私の住む静岡では、かつて狩野川台風で大きな被害を受けたが、長い時間が経過すると「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ではないが、住民は災害への備えを忘れ、それとともに建設業への理解も薄れていっている。それに談合問題が追い討ちをかけ、さらには「コンクリートから人へ」という政策によって建設業は追いつめられた感じがする。沈んでしまった状態から浮きあがり、何とか反転攻勢をかけたいと思うが、いい知恵がない。

脇:業界の努力だけで解決のつく問題ではない。発注者の仕事の仕方や施策がかかわってくる問題なので、発注者にその問題意識がないと解決は難しい。

ところが、発注者の中では、選挙で選ばれた人が幅をきかせている。その人たちは、常に一般の人がどのように感じているかを中心にものごとを考えている。一般の人が災害を忘れると、政治家は票にならないので、防災を政策の中心に取り上げることはしない。それで災害対策は置き去りにされることになる。

有権者だって忘れることがあるわけで、そういう場合は行政組織にいる人がしっかり対応しないといけないのだが、選挙で選ばれる人は、役人を活用しようとしない。以前は政治家と役人の関係には、一種のバランスがあったが、政治主導がこのバランスを崩し、その弊害が出ている。もちろん、政治家の中には気配りのできる人もいるが、人間には得手、不得手があるので、あらゆる分野に対応できるわけではない。それで行政組織がしっかりと対応するという連携が必要だが、とれていない。選挙で選ばれた人が一番だという誤った価値観は捨てるべきだ。選挙絶対、有権者絶対という民主主義の欠点が間違った事態を招いた。過度の政治主導は改めるべきだ。

小野:社会保障費が増え、そのあおりで公共事業予算が削減され、地方の建設業が疲弊し、国土が荒れていると言っても過言ではない。

脇:「大砲よりバター」という言葉がある。戦争はいやだ、軍備に使うより食べ物を配れという意味だが、それを支持する人が多い。橋や道路の整備は遅れてもいいということで、「コンクリートから人へ」が有権者受けをした。しかし、この考えはいずれ行き詰まる。国民が豊かさと安心・安全を確保するには、社会資本整備と社会保障がバランスを保つことが大切なのに、今は弱者を助ければいいということで、公共事業が抑制され、バランスが著しく崩れている。バランスをとるには年金や医療費などを抑えて、社会資本整備に財政を投入することが必要だ。その意味で、過去20~30年間の自民党政権、民主党政権の政策は間違った方向に進んできた。

それで、今こそ政策を見直すべきだと主張してきたが、政治家も目覚めて、日本はどうしたらいいのかを本気で考え始めた。この課題は経済、財政、税制などさまざまな分野に及ぶことなので、公共事業を増やすといった考えだけでは修正できない。トータルな国家のあり様、地方のあり様から考え直していかないといけない問題で、これがすべての政治家、行政の担当者が取り組むべき最優先の仕事と言ってよい。日本は本当に壊れた感じがする。

小野:東北の復興の槌音が全国的に波及する淡い期待を持っている。予算が厳しいということなので大きな期待は持てないが、少なくとも住民も安全な国土づくりへ向けて、考え方、意識を変えてほしいと思う。

脇:皆が皆トータルな意見を言うことはできないので、それぞれが「こういうことで困っている」と述べ合い、その後に全体としてのバランスをとることだと思う。建設業界も「こういうことで困っている」と声を出すべきだ。