建設業再生の課題と対策を提示

佐藤企画専門官が講演
建設業振興委

平成23年度の第1回建設業振興対策委員会(小野徹委員長)は、9月8日正午から東京・丸の内の朝日生命大手町ビルで、国土交通省土地・建設産業局建設業課の佐藤守孝企画専門官を招いて開催し、同企画専門官は「建設業をめぐる最近の動き」をテーマに講演した。

佐藤企画専門官は、野田内閣の発足によって前田武志氏が新国交大臣に就任したこと、建設業課長を経験した竹歳誠前国交省事務次官が同省出身者として初の内閣官房副長官に就任したこと、国交省の組織改正によって建設業行政を所管する建設業課が総合政策局から土地・建設産業局の所属となったことなど、直近の国の動きに言及した上で、6月に建設産業戦略会議がまとめた「建設産業の再生と発展のための方策2011」(再生方策)を紹介した。

再生方策について同企画専門官は「地域を支えてきた建設業が疲弊しており、その再生が最も基本的な課題との認識の下、昨年12月、馬淵元国交大臣の指示により検討が開始された。地域建設業が厳しい状況にあるとの一貫した認識に立って、再生のための当面の課題と対策を描いたレポートであり、大畠前大臣の下でその具体化に着手した」と述べ、概要を説明した。

再生方策は、建設業の現状を定量的に分析した上で、地域社会の維持、技能労働者の雇用環境の改善、技術者の育成と適正配置、公共調達市場と受・発注者関係、海外市場への積極的進出、過剰供給構造の是正、東日本大震災の7点に課題を整理するとともに、それぞれの課題への対策を提示している。

このうち、地域社会の維持への対策として包括発注(一括契約、複数年契約等)や、地域建設企業の共同企業体による受注など、地域維持型の契約方式の導入を新たに打ち出している。その具体的事例として同企画専門官は、地域の維持に不可欠な災害対応、除雪、インフラの維持管理といった事業について、担い手を確保できないおそれがある場合に、除雪業務と道路の維持補修、道路巡回と河川巡視、複数の区間の除草業務などを一括契約すれば、年間を通じて人や機械を有効活用できるほか、複数年契約をすれば、発注者側としても安定的な維持管理が可能となると語った。また、地域維持事業の実施を目的とした共同企業体制度を導入するため「共同企業体運用準則」の見直しを行うことを明らかにした。

技能労働者の雇用環境の改善策として保険未加入企業の排除を取り上げているが、同企画専門官は「社会保険への加入状況をみると土木が71%、建築が64%と低く、特に2次、3次下請等では50%前後にとどまっている。技能者の労働環境の底上げとともに、法定福利費を負担しない企業が真面目な企業を駆逐する不健全競争に歯止めをかけるため、行政、元請企業、下請企業が一体となって対策を講じる必要がある。今後、関係者間で認識と具体的な取り組みを共有し、一歩一歩着実に進めていくことが重要」と語った。

技術者の育成と適正配置については「施工の品質や安全を確保するためには、工事現場を担う技術者の資質の維持・向上と、保有資格の効率的な確認、専任制の徹底が重要であり、そのための効果的な手法として、諸外国の例も参考に技術者に関するデータベースを整備する」「現行の業種区分となって以降40年が経過しており、ストックの増加、少子高齢化、環境重視など社会情勢の変化に即した建設工事の内容の変化や関連制度の改正等も踏まえ、関係団体の意見を聞きながら点検を進めていく」と述べた。

公共調達市場と受・発注者関係の対策では、地方自治体等におけるダンピング対策強化、段階選抜方式の活用推進などを盛り込んでいる。同企画専門官は「都道府県の工事では、低価格入札の発生率が高くなってきており、予定価格の事前公表のみを採用している都道府県ではくじ引き落札の発生率が2.4倍と高いことから、事前公表のとりやめなどの対応が必要」「総合評価落札方式の技術提案・審査に予定価格の7.1%のコストがかかっており、受・発注者双方の手続きコスト縮減のため、段階選抜方法の活用を推進することが必要」と述べ、「これらについては、地域維持型契約方式とともに、8月9日に閣議決定した入札・契約適正化指針の変更により措置し、国および地方公共団体の発注機関への要請を行った」と説明した。

この説明を受けて、小野委員長は「戦略会議は学者だけで構成されたので、検討成果にあまり期待を持っていなかったが、よくやっていただいたという印象だ。地域維持型の契約方式の導入は、集落を維持するための武器になる。予定価格の事前公表のとりやめなど地方に対する指導がより明確になった」と評価した。その一方で、「全中建は一定規模以下の工事での指名競争入札の採用を要請したが、盛り込まれなかった」と述べるとともに、「閣議決定した入札・契約適正化指針では発注者責任にふれていない」と指摘した。

これに対して佐藤企画専門官は「公共工事受・発注者間における契約の適正化の促進のため、8月末には『発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン』を作成し、周知を図っている」と付言した。

委員会委員は次の通り。

委員長・小野徹(静岡)、副委員長・山口巖(東京)、委員・山田幸一(八戸)、木下紘(岩手)、千歳毅(山形)、新井淳一(茨城)、板橋幸雄(栃木)、土田司朗(東京)、小池克彦(神奈川)、菊嶋秀生(横浜)、石井源一(静岡)、木一光(愛知)、勝本一登(京都)、日野一基(大阪)、後藤文好(広島)、横村満昭(鹿児島)