岡本弘会長、4期目の課題を語る

地域建設業の発展を支える組織の若返りと活動の継続性確保

全国中小建設業協会は、6月8日に開催した通常総会において任期満了に伴う役員改選を行い、新役員を選任、その後に開かれた理事会で会長に岡本弘氏(広島)を4選した。中小建設業界が厳しい経営環境に直面する中で、岡本体制の4期目がスタートした。「社会に奉仕する地場産業」を目指して活動に取り組む岡本会長に、豊田剛副会長・広報委員長が今後の課題などについて聞いた。

--まず、今後の協会運営に関する抱負や新役員、会員に期待する会長の考えをうかがいたい。

会長として4期目を引き受けるにあたって、いま最も重要視しているのは、全中建組織の若返りと、中小建設業界が危機に瀕している中で、地場建設業の発展をどのように支え、次の世代にそれをどう引き継いでいくかだと考えている。

--今年度のスローガンに「若手経営者の育成と活用」を掲げているが。

その観点から今回、副会長2名を増員し、若手の方に就任していただいた。今後、若手経営者が積極的に協会活動に参加してほしいと考えている。とはいえ、その一方では協会に参加していてもメリットがあまり感じられないとの意見が多くなってきた。それが活動停滞の一因にもなっている。行政も、組織に参加して業界の発展に貢献しようとしている業者を大事に扱う方策を考えてほしい。

「儲けること」忘れた建設業

--むしろいまでは、業界の発展に貢献し、仕事にまじめに取り組んできた業者が淘汰されつつある。

これまでは、まじめに仕事をしていれば経営が成り立ったが、いまではうまく立ち回らないと、生き残れなくなってきた。なぜそうなったのかが問題だ。この間の入札・契約制度などの変更だけでなく、日本人として忘れてしまったものがあると思う。仕事を受注しないことには銀行なども相手にしてくれない。だから、なりふり構わず安値受注に走る。その結果、適正な利益が出る仕事を受注することを忘れてしまったようだ。そのため、優良な業者が消え、そうではない業者が増えている。業者の数は減らずに、質だけ落ちているのが現状だ。

そうした現状を打破するには、会員が全員参加して活動することが不可欠だ。同時に、一致団結した活動が全中建の存在価値であることを社会に認められるよう努力していきたい。そのためには「忘れかけていること」「忘れてはならないこと」を我々これまで業界を牽引してきた世代がしっかりと若手に引き継いで、活動を継続していくことが大切だと思う。国会の若い先生をみていると、議員としての資質が変わってきていて、キャリアのあるベテランの議員との間に一種の断絶が感じられる。建設業界ではそのような事態は避けなければならない。しっかり引き継ぎをして全中建の活動を継続させなければならないと思う。

先行投資の重要性を再認識させた大震災

--国の審議会などの場に全中建の代表が参加できないケースも起きている。これからは受け身ではなく、はっきりものを申すようにしないと生き残れない。東日本大震災の復旧・復興に対して全中建として対応する必要があると思うが、会長の考えは……。

外国を含め、多くの人びとが義援金を拠出して被災地を支援しているが、これまでに義援金は約20%しか配られていないなど善意が伝わっていないし、復旧・復興事業もあまり進んでいないようだ。全中建としても復旧・復興に向けて何ができるか、被災地の意見を聞いて取り上げていきたい。

―復興に向けた第3次の補正予算が編成されようとしている。当然、必要な予算措置だが、投資が必要なのは被災地だけではない。公共事業予算の5%が被災地向けに留保され、その分だけ他地域の予算が減少した。

言うまでもなく、被災地への予算配分は必要なことだが、その他の地方への配分も重要だ。安全・安心な国土をつくるために先行投資は欠かせない。釜石では湾口防波堤があったために、津波の到来が数分遅れ、それで数千人の生命が救われたと言われている。今回の大震災は、国民の生命と財産を守るための先行投資が重要、不可欠であることを再認識させた。公共事業が必要な理由はそれだけではない。地域経済の活性化のためにも必要で、公共事業の抑制は早く撤回すべきだ。

中小規模工事では指名競争入札を

--現在、政治が非常に不安定な状態にあるが、政府や国交省などに要望すべきことは。

いま言った公共事業を拡大し、日本経済を活性化させることと、入札契約制度の改善を図ることである。いまの制度は地域に密着して活動している業者の評価の仕方ができていない。地元の業者は、どれだけの雨が降ればがけ崩れが発生するか分かっているなど、きめ細かな仕事ができるという利点がある。だが、安ければ安いほどよいということで一般競争入札を採用する発注者が多い。それが、災害対応や除雪、インフラの維持管理ができない空白地帯を生む一因となっている。

このような問題の解決のためには、地元活用型の入札制度へ再構築することが大切だ。それには、地元事情に精通している業者を選んで競争させる指名競争入札を少なくとも中小規模の工事で採用することが必要なので、あらゆる機会をとらえて要望していく。個人が自宅を建築するとき、知らない業者には発注しない。よく知っている業者に仕事を頼むのと同じ考えだ。

ダンピング受注の排除にも積極的に取り組んでほしい。理事会などで状況を聞くと、都道府県段階では対応を真剣に考えるようになってきたが、市町村になると、まだ不十分と言っている。最低制限価格の引き上げや予定価格の事前公表廃止などが確実に行われるよう指導してほしい。

―制度に問題があるという考えもあるが、それだけではない。人として考えても、明らかに間違った方向に進んでいる動きも見受けられる。

工事を受注しても仕事をせずに、ピンハネするようなことが横行している。働かずにうまい汁を吸うような業界であってはならない。建設業は供給過剰だから、農業や林業などの異業種へ進出すべきだという意見もあったが、私は、それは簡単なことではないと言い続けてきた。

--5%程度の成功例もあったから、異業種への進出が言われた。

成功例がいくつかあるものだから、異業種への進出と言っているが、容易に成功するものではない。建設業の経営体質のままで、余力、余分な時間があるときに兼業として行うのでなければ、成功するものではない。

建設業には政治を変える力がある

--建設業の就業者数はかなり減少したが、それでも現在500万人と言われている。これだけの人がいれば、政治を変えることができる。

先の参院選で脇雅史先生の選挙で集めた票は14~15万だから、就業者500万人に比べると圧倒的に少ない。政治の世界では、建設業界にはその程度の力しかないという認識である。これでは政治を変えることはできない。いまの建設業界は、自分たちが何で飯を食べているのか忘れている。いい時代もあれば悪い時代もある。悪い時代は力を合わせて、いい時代になるよう軌道修正しないといけない。