公正・中立な第三者の活用モデルについて

公正・中立な第三者の活用モデルにおける現地訪問ミーティングを終えて
国土交通省総合政策局建設業課入札制度企画指導室


国土交通省では、工事請負契約における受発注者間の対等性の向上や、双方の認識の不一致に起因するトラブルの未然防止と早期解決を図り、建設業における取引慣行を構造的に改善していくため、受発注者の間に立つ「公正・中立な第三者」(以下「第三者」という)の活用を進めている。

今般、宮崎県東臼杵郡椎葉村が発注した実際の工事(村役場庁舎新築工事)において、発注者、受注者及び第三者との間で「合意書」を締結の上、第三者の活用を試みる「公正・中立な第三者の活用モデル事業」(以下「モデル事業」という)を開始するとともに、その一環として行った現地訪問ミーティングの結果についてとりまとめたので、概要を紹介する。

1.背景・経緯
建設産業においては、かねてから、注文者から請負人への様々なしわ寄せの指摘があり、実質的な対等性の確保・向上が課題となっており、平成22年7月26日の中央建設業審議会では、建設工事標準請負契約約款が改正され、対等な交渉能力を前提とした受発注者間の協議において、公正・中立な第三者の活用を推奨するとされた。

2.第三者活用の意義
第三者の活用については、諸外国のような訴訟社会でない我が国においても、受発注者間の対等性確保等の観点から、積極的な意義があるものとされている。

具体的には、第三者の指摘によって、契約の初期段階から受発注者間の認識の不一致が解消され、手戻りが減るため、無用の工期遅延や経費増のリスクを低減できること、権威ある専門的な第三者の意見があれば、行政の職員だけで判断した場合に比べ、議会など内外への説明で理解・納得を得やすいこと、透明な契約関係が確立し、契約外の貸し借り等を生む土壌がなくなること、第三者の「目」があるため、交渉を有利にするための不合理な要求を行いにくくなり、また、立場に固執せずに済むため、受発注者間の信頼向上、調整のための時間的ロスの合理化につながること、紛争の早期解決を図ることができ、紛争の手続コストを低減できること、などの意義がある。

3.モデル事業の位置づけ
第三者の活用の意義・効果や課題の洗い出しを行うため、今般、実際に施工される工事において、第三者活用に関するモデル事業を行うこととした。その流れは、以下のとおりである。
①対象工事の選定
②対象工事に派遣する公正・中立な第三者の選定
③対象工事に第三者を派遣し、現地訪問ミーティング等を実施
④実施結果の整理及び検証
 
今回のモデル事業では、FIDIC※約款で第三者が行うこととされている「裁定」までは行わないが、トラブルに発展しかねない事項について第三者が指摘するとともに、当事者の疑義等について参考意見を述べることとしている。

※FIDIC(Federation Internationale des Ingenieurs Conseils)とは、国際コンサルティング・エンジニヤ連盟(1913年にベルギーで創立されたコンサルティング・エンジニアを会員とする世界的規模の非営利業界団体)の略称。発注者と請負者のどちらにも属さない独立・中立な機関で、建設工事やプラント工事などで発注者―施工業者等が結ぶ契約条件を盛り込んだFIDIC契約約款は、発注者・請負者のどちらにも公平であるため、国際建設事業で広く使われている。

4.モデル事業の概要
(1)対象工事
今回のモデル事業は、宮崎県東臼杵郡椎葉村発注の椎葉村役場庁舎新築工事を対象工事として実施している(表1参照)。

(2)第三者の選任と業務内容
第三者には、学識経験等を考慮し、「税所陽一(さいしょよういち)」氏を選定し、任命が行われた(任命期間は、対象工事の工期と同一期間)。同氏は、海外プロジェクトの経験を通じ、契約管理の知識が豊富であり、英国におけるADR(裁判外紛争解決)組織の一つである英国仲裁人協会準会員の資格を取得するとともに、FIDIC認定のアジュディケーター(裁定人)審査ワークショップのトレーニングを受けており、中立的立場からの活動が期待できることから選任された。

今回のモデル事業において第三者が行う業務の内容は、契約の直後、契約図書を閲覧し、契約当事者からの現場説明を受けて、施工途中でトラブルになりそうな事柄(受発注者間で認識の不一致がある事項等)に関し、(技術的観点からの)参考意見を述べ、あわせて、過去の対応例等を紹介する。
 施工段階では、工事の進捗をできる限り把握するとともに、契約当事者間の協議が円滑に進むよう、求めに応じ、契約図書や工事実施に関する疑義について、(技術的観点からの)参考意見を述べる。

(3)現地訪問ミーティング
工事請負契約の締結直後である平成23年3月30~31日の2日間にわたり、FIDIC契約約款に基づく現場訪問の実例を参考に現地訪問ミーティングが実施された(表2参照)。

第三者と受発注者の間での質疑応答では、第三者が施工途中でトラブルになりそうな事項を取り上げ、これに受発注者が答える形で進められ、以下のとおり受発注者間の認識の不一致や問題点が明らかになり、その解消や認識の共通化が進んだと考えられる。
・基礎掘削で玉石が出現した場合の工期延長等
・村のイベント時等における仮囲いの仮撤去
・隣接地の別途工事との進入路の競合
・付随する別工事との工程競合
・地元木材の材料指定
・東日本大震災の影響等により資機材が入手困難
・東日本大震災の影響等による資機材価格の高騰

①自己紹介(所要約10分)
②第三者を活用する意義等(所要約15分)
③椎葉村役場庁舎新築工事の概要、契約内容の説明(所要約60分)
④現場視察・質疑(所要約60分)
⑤受発注者と第三者との質疑応答(所要約120分)
⑥第2回の現地訪問ミーティングの時期(所要約15分)
⑦第三者と受発注者との情報交換ルール(所要約10分)

5.第三者活用に関する今後の課題
今後は、モデル事業を通じた第三者の活用効果の検証を引き続き行うとともに、紛争の早期解消に重点を置いた新たなモデル事業を実施し、その結果も踏まえて、制度的検討、モデル合意書の改良の検討、第三者の活用促進マニュアル(第三者の選定基準や候補者リスト、運用の具体的ルール、受発注者の負担軽減策等)の検討などを行い、第三者の本格的な活用を図っていくこととしている。