新年特別座談会

公共事業の減少に次ぐ減少と地域経済の疲弊により、全国いずれの地区でも工事量が大幅ダウンとなっている。地域を支える中小建設業が今まさに消えようとしていると言っても過言ではない。国土交通省の馬淵大臣もこのままでは地域の建設業で生き残れない企業が続出するとして、対策の検討を指示、国土交通省で作業が進められている。どうしたら地域の安全・安心に貢献する中小建設業が生きていけるのか、全中建本部で活動し、各地域では指導的役割を果たしている方々に、ダンピング対策を含め、様々な問題を語り合っていただいた。

出席者
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全中建岩手 全中建理事 山元一典


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横浜建設業協会 全中建理事 土志田領司


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静岡県中小建設業協会 全中建理事 石井源一


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鹿児島県建築協会 全中建常任理事 前田正人


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愛知県土木研究会 全中建広報副委員長 朝日啓夫


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全中建広島県支部 全中建広報委員 藤井啓文


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香川県中小建設業協会 全中建広報委員 白川正昭


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(司会) 全中建広報委員長 豊田剛

危機的環境でも業者数は1割減

豊田
我々の業界は非常に厳しいというのを通り越しまして、末期的な症状に近いものを感じています。地方の皆さんの現在の実情、昨年度の各地域における経済状況、それから建設業の景況をお話しいただきたいと思います。鹿児島の前田さん、いかがでしょうか。

前田
公共工事に依存している鹿児島県においては、国・地方とも厳しい財政状況を背景に、長年にわたる公共工事費の大幅な削減による受注の減少、価格競争の激化に加え、金融機関の融資姿勢の厳格化や不動産状況の低迷等により、経営環境は危機的な状況にあると考えられます。
鹿児島県の許可業者の数はここ10年以上6千社で推移しており、減少率は1割に満たないということです。これは28業種の建設業の許可を取っている数で、このうち建築は平成22年度、1,175社が県の格付けをもらっている。減少率はやはり1割くらいです。業者数はそう減っていないというのが現状です。
建設業の従業員数は、平成8年度の8万9千人をピークに大幅に減少しています。公表の数字では、平成18年が6万2千人で、ピーク時の約70%になっています。
平成21年11月5日、鹿児島県発注の海上工事について独占禁止法違反で公取の調査が35社に入りました。さる11月9日、31社に排除措置命令が出まして、27社に課徴金納付命令が出されたということです。この課徴金納付令が出た27社の中に、私ども建築協会会員も7社入っていたというのが鹿児島の現在の建設業の状況です。

豊田
まともにやっていても苦しいのに、またさらに課徴金では、会社がおかしくなりますね。
では次に、横浜の土志田さん、お願いします。

土志田
横浜市では、昨年8月に市長が途中で市長職を放り出すという大変なことが起こりました。すぐに市長選が行われ、開港150年にして初めて女性の市長が誕生しました。
前の市長は建設業を目の敵とは言いませんが、要は安ければよいという考え方でしたので、大変苦労しました。
横浜市は政令指定都市として、市予算が神奈川県予算よりもはるかに大きいのです。県のほうは本当に河川とか急傾斜、県立高校、そのくらいの工事しか市内にはありません。そういう中で、私どもは県の仕事に関してはエリア分けでの発注をお願いしました。その結果、要望が聞き入られ、エリア分けをしていただいて、現在に至っている状況です。

災害出動協定でインセンティブ

会員の動向などを見ますと、神奈川県建設業協会は、会員の一番多いときが平成8年で、全体で940社、横浜支部で160社くらいの会員がいたわけです。実は横浜支部の会員のうちの半数以上は、県外大手さんだったんですが、景気動向と入札契約制度の変転とともに大手さんが支店を廃止されて抜けられるという状況になり、現在横浜支部は建築系企業が29社しかおりません。
私ども横浜建設業協会は、ピーク時の373社が、16年に300社を切りました。これについて市、県とも災害出動協定を結ばせていただいておりました関係で、会員に関してはインセンティブを与えるという条件を付けていただきました。発注要件の中にそれを入れていただいたことで、会員数が一時40社ほど増えまして333社まで行ったのですが、現在はまた下落傾向をたどっております。昨年末は281社ということで、今までで一番少なくなり、会員の減少に歯止めがかからないというのが現状です。

豊田
次に岩手の山元さん、ひとつよろしくお願いいたします。

山元
岩手県の経営状況は、ほかの地域と同じで、良いわけはないです。法人税の申告の資料があったので、お話します。2009事務年度(2009年7月から2010年6月)、黒字申告が約28%弱ということでした。1971年から約40年間で一番低い状況になっています。県内の経済環境はそういう状況だとご理解ください。
我々のことですが、岩手県発注の公共工事のピーク時は平成7年度で、県内業者は約1,713億円の受注となっております。それが平成21年は459億ということで、現在はほぼ73%も下がっている状況です。

急激に競争激化落札率81.5%

会員数のほうは、ピーク時が平成10年で、ちょうど800社くらいありましたが、それが22年度9月現在で557社です。非常に大きく影響を受けています。
その理由が、低入札なのです。岩手県の場合には極端に変わってきているのでご紹介させていただきたいと思います。
今年の第1四半期ですが、1億以上の工事が24件発注になっておりまして、それに対する低入札が19件です。全体の約80%弱が低入だったという状況です。前年度が28件中7件ということで、まだ25%ですが、今年に入って急激に競争が激しくなってきておりまして、全体的に平均約81.5%の落札率という状況です。

豊田
それでは静岡の石井さん、お願いします。

石井
やはり皆さんと同じように、非常に厳しくなっております。静岡県の場合は、車とか精密機械という輸出物があるのですが、輸出先がヨーロッパとかアメリカなど先進国です。輸出によって景気が良くなるのは、ちょっと難しい状況です。
建設関係につきましては、県の協会が平成22年度の景況調査を行いましたので、平成22年1月と10月との比較をお話します。
施工高は、公共土木減少の回答が78.8から81.9ということで、増加しています。これは発注量が少ないということです。それから民間の土木減少の回答が、これも施工高で74.6から76.9へと増加しています。
業界の動向につきましては、皆様方と同じように「悪化」が12.2から17に増加しているなど、厳しい状況になっています。

豊田
いろいろお話を聞いていますと、まずとにかく採算が合わないというのが大きなポイントです。それと会員数の減少。これはここ2~3年ずっと言われているのですが、とにかく歯止めがかからないということで、各地方の協会の方は大変な思いをされていると思います。
話が前後して恐縮ですが、広報委員会のメンバーが四国、愛知、広島から来ておりますので、それぞれの地域について話して下さい。

ダンピングが全県下で発生

朝日
愛知県も似たり寄ったりの状況でして、大きく影響しているのがリーマン・ショックです。愛知県は税金をしっかり納めている優良企業は数多く、特に自動車関連産業つまりトヨタグループなどは、多額の税金を納めていましたが、2年前のリーマン・ショックで納税額はかなり減少し、税収も同様に大幅に減少しました。
もう一つの決定的な要素は、これは全国一緒でありますが、自民党から民主党に政権が移り、更に公共事業の見直しがされ、予算も大幅に減額されました。つまり、ダブルパンチになり公共工事は減少して、一段と厳しい受注競争を強いられ、ダンピングが多発しているのです。
そのような状況の中、愛知県は1億5千万円以上が本庁入札であります。本庁入札の場合は、だいたい失格ラインが70~72となっており、そのライン付近で応札した業者が落札しているため、ほとんどの入札がダンピング受注となっています。一方、1億5千万円以下は各建設事務所の発注で、失格ラインは83~84であります。いずれにしても極めて厳しい形での落札でありまして、ダンピングは全県下で発生しております。
ただ、愛知県の場合は、愛知県に本社を有する者あるいは出先の各事務所で管内に本社を有する者と地域条件を付けてくれています。なかには10億を超す大型工事でも内容によっては大手会社を一切入れずに、地元のJVで、6億円未満はほとんど地元企業が単独受注できます。しかし仕事がないものですから、すべての業者が背に腹はかえられないという認識の企業が多く、ダンピング合戦をやっているのが実態です。
愛知県の場合は愛知県土木研究会という組織がありまして、なんとかこの厳しい状況を会員同士が手を取り合って対応しております。最盛期は会員が450社ありましたが、退会企業も多く現在は341社となっております。ダンピング受注により会員の経営状況は厳しく、恐らく8割以上、下手すると9割方は赤字会社になっているだろうと予想されています。

豊田
広報委員の四国の白川さん、何かございましたら、ひとつ。

早く辞めるか財産無くすか

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白川
たぶん全国津々浦々全部同じことで、今の時期に工事が有り余っているとか、会社の税金対策をどうしようとか、そういうところはたぶん皆無だと思います。
私どもの香川県も、県庁所在地であります高松市、その次の市である丸亀市、県の工事も市の工事も全部ダンピング入札です。香川県の場合も同じで、平成12年のピークから工事量が金額で3割まで減っていますが、業者数は1割しか減っていない。結論から言えば業者数が3割にならなければ無理ですよね。早く辞めるか、最後まで戦争に加わって財産をなくすか、借金でどうするかという、一か八かの選択しか私はないと思います。香川県下は全部同じです。
ご存知のように、四国も高知県の建設業協会とか、徳島県の建設業協会とか、会長さんの会社がどんどん倒産して、次々会長さんが代わっております。香川県も全体的な状況は同じだと思います。

豊田
それでは広島の藤井さん。

藤井
広島県の三原市からまいりました。三原市と言ってもわかりにくいかもしれませんが、今『てっぱん』をNHKでやっていますよね。あの尾道市の隣の町です。
県の東部建設事務所三原支所管内は、3市5町の範囲だったのですが、現在は合併しまして2市1町、約25万の人口規模になっております。


土木事務所予算ピークの3分の1

全体的に非常に経済状況は悪くなりました。私の友達なんかは三菱重工の下請会社をやっているのですが、現在は4労3休でやっている。雇用調整助成金をいただいて、なんとかしのいでいるという町の状況です。
皆さんと同じように、土木事務所の予算というのは、一番のピーク時から言いますと現在は約3分の1。皆さんとだいたい同じかなと思いながら聞いていたのですが、それくらいの発注量になっております。
業界のほうですが、5年前にいわゆる談合問題で業界が一回解散いたしました。解散して、新たにそういうことのない、いわゆる名前を変えて、「尾三建設情報センター」という名前にしまして、新たな形で発足をしました。当初は68社の加入で、一時的には82社まで増えたのですが、またそれから少しずつ減りだしまして、倒産もありますし、廃業もありまして、現在78社の加入になっております。全体的にはそんな感じです。

豊田
全国の状況は苦しいというのがだいたい同じようなことになってくるわけですね。特に先ほどから出ております、現状の最大の課題の中の一つとしてダンピング問題があろうかと思います。
もしできましたらダンピング問題についてもう少し突っ込んだ話をお願いしたいと思っております。いかがでしょうか。

土志田
総合評価方式において神奈川県は低入はダメだということでやっていただけています。ですが横浜市は低入はオーケーなのです。
神奈川県は一般競争入札(条件付)を導入するのに4年間かけて、揉みに揉んで作り上げた制度で、神奈川方式という言い方で発表されたのです。しかし横浜市では、たった4カ月で作り上げた制度を平成15年から導入しました。その制度は、安ければよいというのです。トップが「安ければよい」と言うと、行政がすべてそちらへ向きますので。大変苦しみました。
その後、神奈川県が打ち出した神奈川方式に近付けてくれと要望しました。ダンピングでは絶対に生き残れない。ダンピングは違法だろうということで、やったのです。「ではダンピングの定義は何だ」という話まで言い出す始末でした。
総合評価方式は脇先生が作ってくださった中で、私どもも本当に期待してきたのですが、簡易型や特別簡易型というやり方で今盛んに導入しようと各地方自治体がやっていますが、これも行政の意向を反映してしまう部分も出てきています。
やはり低入はできればやめてもらって、最低制限価格をきっちり、全国どこでも最低制限価格ありの入札方式にしてもらうのだということを発信していかないといけないのではないか。各地方で闘うことも大事ですが、全中建という大組織があるわけですから、そこでダンピングを阻止するようなことを申し上げていかないと、本当に生き残っていけないという思いが非常に強くあります。

豊田
このダンピング問題については、何かございますか。

Aクラス半減が波紋呼んでいる

前田
鹿児島の場合は業者の供給過剰ということで、価格競争が激化しているのが現実です。特に一般競争入札では最低制限価格での応札が大半を占めています。鹿児島の場合は、総合評価方式にしても一般競争入札にしても最低制限価格が設けられているのです。そういう中で、一般にしても総合にしても、最低制限価格ぎりぎりで皆さんが探り合いをやっている状況です。
全国と比較して鹿児島県の入札契約制度の改善はなだらかに推移しているというのが正直なところです。WTO対象工事を除いて最低制限価格があって、一般競争入札案件は5,000万円以上が対象になる。これは鹿児島県単独のモデルでして、土木で88~89%です。建築については8月20日以降、90%くらいが最低制限。鹿児島県の場合はそのようになっております。
鹿児島は、全建に入っている建設業協会という土木を中心とする組織があります。私どもの建築協会は230社くらいの会員がいたのですが、現時点で188社になっています。
これは土木の方のことですが、昨年(平成22年)10月15日の知事の定例記者会見で、来年の格付けで土木Aクラスを半減にせざるを得ないと判断しているという発言がありまして、波紋を呼んでいます。知事のお考えとしては、工事量と業者数のバランスが、過剰供給との問題であるということで、半減せざるを得ないのではないかということを言っておられるようです。

豊田
山元さん、やはり岩手のほうも低入調査をやっているのですか。

山元
一応、調査価格が決まっています。例えば最終的に10社で応札した場合、その調査価格があって、それを割った場合には低いほうから6社、(6割)の業者の平均の価格を出して、それに対して9掛けなのです。まったく話になりません。
実はこれが一番の岩手県の問題なのですが、官製談合がありまして、そのときに県の職員が犠牲になっているのです。そこで岩手県がやったのは、県土整備部から総務部に入札権限を移したことです。
談合で排除勧告を受けた91社の中に入っていた前の協会の役員は、会長もそうだったのですが、人心を一新しなさいということで全部抜けていただいて、協会はいま新体制でやっている状況です。あとは有識者会議というものを作って、弁護士さんや、そういう関係の方々に意見をいただいております。今後は、業界と県(発注者)、それに有識者の第三者が入って議論する場を設けられないか検討していきたいと思っております。
県への指導を出来るのは総務省なので、いくら我々が騒いで国交省に対してだけ言っても、それだけでは足りないので、我々も攻め方で足りない部分を考えてやっていかなければなりません。もう一度頑張って政治的な強さを持たないと、これはどうしようもないのではないかと思います。

豊田
このダンピング問題について、他に何かございますか。

何度も低価格で受注の業者いる

石井
静岡県内で国交省の出先機関は、ダンピング防止対策としては調査基準価格の設定および施工体制確認型総合評価方式というものを導入しています。これによってある程度、低入札価格での受注業者は少なくなってきていると思います。
しかし、調査基準価格を下回った価格で応札して、必要書類の提出を辞退しても特にペナルティもないという現状で、幾度となく調査基準価格ラインで入札に参加して、ときには受注をしている業者がいます。それに対抗する意味で、競争に参加した他の会社も同じような応札をしてしまう。これによって真面目な業者が低価格での入札を余儀なくされてしますという形になってきてしまっています。
そのことがその地域の全体の受注価格を押し下げてしまっている。先ほども話が出ていましたように、優良企業の会社経営を圧迫しているというのが現状だと思います。これをどうしたらよいのかですが、2億5千万未満の工事には「県内に本店のある」ということを明記してもらいたい。それから行政との地域防災協定、地域貢献などに伴い、行政の考えられている地域優先の方式が明確化されることを各方面へお願いすることしかないのではないかと思います。

藤井
広島の三原地区の場合、平成20年度までは、県及び市町村とも最低制限価格が75%程度で設定されておりましたが、それ以降は、県工事で1億円未満のものについては、80~82%に引き上げられ、また、市についても最低制限価格の基準は、80~82%ですが、これに千分の1~千分の9の調整を行い明確に最低制限価格が分からないようにしています。いずれにしても予定価格が事前に公表されていますので、80~82%のラインで、くじによる落札者の決定が多くなり『運』の問題ということになります。したがって、最低制限価格は90%以上に引き上げ、予定価格の事前公表は早急に中止すべきであると考えています。

豊田
わかりました。他にダンピングの意見はありますか。

白川
私の近くの丸亀市では、公表も何もしないでいきなり最低制限価格を90%にしたらしいのです。それまでは77~78ぐらいが最低制限だったそうですが、急に90%になったわけです。それで第1回目のときはみんな知らないから、95%で入れていた人が1人だけいて、その人が落札しました。(笑)丸亀市の発注で3,000万円くらいだったと思うのですが、急にそうなったらしいです。

豊田
それは普通では考えられないことです。


最低制限価格90%それが妥当な線

白川
丸亀市は競艇事業をやっていて、去年の秋頃からナイター設備を設けたところ、仕事終いの人がたくさんきて、競艇事業で収入が多くなったらしいです。それで予算も多少増えたらしく最低制限価格も急に10月から90%になったようです。

土志田
その90%というのが僕は妥当な線だと思うのです。最低制限価格を90~95に僕はすべきだろうということを10年も前から言っているのです。

朝日
ダンピング対策は、業者の対応が大きな要素ですが、一番の決め手は、発注者の認識でありまして、発注者が絶対にダンピングを阻止するという強い姿勢があればダンピングは防げると思います。その一つが国土交通省の対応です。国土交通省は入札時には全てのランク(Aクラス~Dクラス)においてダンピングが多発していますが、実際はダンピングをした企業が辞退をしています。これは制度としてダンピング受注をした場合、数多くの付加条件がありダンピング受注は得策ではないということであります。
残念ながら多くの地方自治体はそこまでの制度ができておりません。口では「ダンピングは良くない」と言っていても、実態としてダンピングが多発しています。つまり認識不足であり基本的には国土交通省と同様に地方自治体も強い姿勢で「絶対にダンピングを認めない」という制度を作らない限り、ダンピングは無くなりません。
ダンピングが何故悪いのか?

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ダンピングが長続きすれば、まともな工事はできないのです。ダンピング阻止の対策を十分に行って最低ラインを85~90%に決定すれば、それ以下の入札をする業者は無くなると思います。

豊田
実は、全中建の理事会でも最低制限価格を95%まで上げるという陳情はしたのです。そうすると国交省の基本的な考えは、100までは5%しか余裕がないので、それは競争性に欠けるということで却下されました。

1割歩切りの自治体もある

朝日
ダンピング対策できちんと対応する地方自治体もあります。中には、国土交通省以上に厳しい条件を付けているところもあります。しかし、ほとんどの地方自治体は行っていません。税収不足を理由にダンピング対策をしないばかりか、金がないと言って更に歩切りをやっているところもあります。愛知県下ではひどいところは1割という自治体もあります。

土志田
実は、神奈川県も横浜市も歩切りをしています。横浜市の場合では、最低制限価格の千分の5プラスマイナス。その枠の中です。ですから宝くじを当てるのと同じで、積算が仮にぴったり合っていても、そこの千分の5プラスマイナスのところの当てっこ合戦になってしまい、ぴたり当たるというのはまずないです。
神奈川県は全部事後公表なのです。歩掛りをはじめ、全ての単価が公表されています。見積もりのものに関しても、積算の段階で、この見積もり案件はいくらで見積もっているという数字が載っています。ということは、きちんと積算ができる人間ですと、ぴったり積算できるようなシステムになっています。それですと、能力があるところだけが取ってしまうこともあるのですが、そこに歩切りというものが存在しています。これが現状です。


時代遅れだと言わないと駄目

豊田
その歩切りについては、国交省から絶対にやめなさいという通達は何回も出されているはずなのです。全中建としても、やっているところを調べて、それは本当にもう時代遅れだということをはっきり言わなくてはダメですね。

白川
私の会社がある、まんのう町は、4年前に旧満濃町・旧仲南町・旧琴南町の3町が合併してまんのう町になったわけですが、それより20年くらい前から3町とも10%の歩切りを行っていまして、合併してもそのまま10%の歩切りをしていました。このため、陳情を行いまして、ようやく、平成22年の4月から5%の歩切りになりました。ただし、町単独事業は10%の歩切りのままです。もちろん、国交省のアンケートには歩切りはありませんと答えています。県発注の工事につきましても平成20年度までは7~8%の歩切りを行っていましたが、これも陳情により平成21年度から2%前後の歩切りになっています。

土志田
横浜市は歩切りではなくて、歩上げが千分の5あるのです。それは言い訳のためにたぶん作っているのだと思います。実を言いますと何が正解かわからなくなっている。(笑)

朝日
基本的に業界の一つの常識として、本社のある場所が営業エリアであり、愛知県でも売上100億円未満の会社では、ある程度の営業エリアがあり、その地域以外は出て行かないというものでした。
しかし、ダンピングが多発することによって、そのようなルールは一切無くなってしまい、地域条件のない工事は大なり小なりどこへでも出向いて応札する企業が増えました。皆さんの地域はどうですか?同じですか?

山元
岩手県はエリアはあるのです。県のほうもあります。我々は、例えば北には行けないとか、実際に出る工事の中で「何地区、何地区」と指定されてしまうのです。
国交省は県よりも地域性を重くみています。そこで我々が国交省の工事をとるためには、エリア外に営業所を作ります。営業所を作ってチャレンジさせてもらう。ですから我々はエリアを広げてくれとかそういうお願いに行ったりするのですが、「努力しなさい」とはっきり言われます。

豊田
次にこれから倒産・廃業が増える中でどういう方策を取っていったら地場産業が生き残れるかというテーマに移りたいと思います。
生き残るためには大手のゼネコンと我々中小と、まず仕分けと言いますか、そういうことをやっていかなければいけない。まったく同じ物差し、尺度で、同じ土俵で闘えと言っても無理なのです。
そのへんについて、我々中小がどのようにやれば生きるのか。他府県の業者を排除してくださいという運動を起こすのか。そのへんのご意見をお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。

消滅しないよう自助努力しないと

白川
結論から言えば、先程申し上げたように、予算が全体的に3割に減っているのですから、業者数も全体的にピークの3割にならないと根本的な解決にならないと思います。だから、その消滅して行く側にならないように、徹底的に自助努力しなければならないと思います。

土志田
横浜の場合ですが、我々から見れば大手志向で、本数では圧倒的に我々が多いのですが、金額ベースで見ると4対6くらいで県外事務所の皆さんに出ているということがありました。
長年運動を展開した結果、今年4月から横浜市会においてオール与党体制で中小企業振興基本条例という条例を作っていただきました。なにしろ横浜というところは昔から市内企業を育てるという感覚が行政には余りありませんでしたので、そこを働きかけて、議員立法で条例を作っていただいたわけです。
条例ができたせいで補助金事業は、今まで市内企業優先という程度のものだったのが、この4月からは市内企業でなければ関われなくなりました。ということは、市外の排除なのです。市外は工事の中に特殊なものがあった場合に初めてエントリーできる。それでも単独ではダメだと。あくまでも市内企業とのジョイントベンチャーの中でやりなさいということになってきました。振興条例ができたということが私たちにとっては強い武器になってくるであろうと思っています。

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前田
業界の疲弊している現状を考えると、協会として会員と協議を重ねながら、業界の未来の展望を図るためには業界そのものが前向きで、とにかく闘う姿勢が必要ではないかと思っています。
住宅瑕疵担保履行制度のアンケート実施結果にしても、私は、まず全中建の建築委員会でまとめましたものを鹿児島の自民党の国会議員に提出して、返事をいただけませんかとお願いしてあります。これを民主党の国会議員の方へも提出しようと思っています。与党及び野党に同じ課題を投げかけ我々の要望に対応してくれる方を支援すべきではないか。そこを強調すれば我々の立場もちょっと変わってくると思っています。
また、私は鹿児島の建築協会の会長ですから、業界のために私は何ができるのだろうかということをしょっちゅう考えています。そこで建設業構造改善のために東京の弁護士さんに来ていただいて、建設業協会が800社、私ども建築協会が約200社、それから港湾協会の三者で協議会を作り検討をしました。このあいだやっとその検討結果が出たわけです。
発注機関や金融機関等の協力・支援を得ながら企業の体質改善を図るとともに過当競争の構造を抜本的に改めるなど競争が健全に機能する環境を実現するというのが最終的な結論だったと思うのです。

正しい理解を取り戻す努力

豊田
横浜の土志田さんからも話があったように、首長さんが代わることで、まるっきり趣旨がガラッと180度変わってしまうのです。こんな馬鹿なことはないのであって、我々の主張というものをやはり継続してやってもらうにはどうしたら良いかというのは一つのテーマです。

朝日
先の土志田さんの発言を聞いて痛切に感じたのは、日頃の努力が一番必要だということです。我々建設業は間違った認識をされています。建設業に対する正しい理解を、自分たちの手で取り戻すための努力が一番必要であり大事ではないかと私は思います。

豊田
石井さん、何かございますか。

石井
先ほども言いましたように、災害とかそういうときに真っ先に私たちが現場に行っていろいろとお手伝いする。そういうことをやりながら、今まで以上に地域の方々に地場の建設業者は必要なのだということをわかってもらうことが第一ではないかと思っています。

豊田
それでは、だいぶ時間も迫ってまいりましたので、現状打開というか、生き延びるためにどうしたらよいかということで、何かございますか。

皆で頑張るはもうないと思う

山元
間違いなく工事量もピーク時の3割を切っていますので、我々業者が多いということも事実だと思います。ここははっきりと差別化して、生き残るために一生懸命やる協会にしなければならないと思います。入札問題でも、いろいろ出ますが、最終的には、自分の会社が受注に結びつければ良いルールで、受注できなければ悪いルールというような状況では困りますので、やはり適正な価格で競争できるシステムにして頂きながら、そのうえで本気でこの建設業で生き残るという業者だけがやっていけるようにしていかないと、みんなで頑張ろうという話はもうないと思います。
いずれにしてもほとんど会費が集まりませんから、本当にスリムな状態でこういう会が運営できて、我々が発注者または行政に対して意見を言える力のあるものに、大きく方向転換をしないといけないのではないかと思います。

藤井
公共工事が極端に減少しているものですから、倒産・廃業していく業者が増えており、また、生き残っている業者も、工事が計画的に受注できなくなっています。このため、人や機械を余裕をもって置いておくことができなくなっており、集中豪雨等の災害対策とか冬期の除雪対策など、県民の安全・安心を守る取り組みが危うくなりつつあります。このようなことの対応を含め、つい最近、県の幹部と建設業団体トップとの意見交換会議が開催されたところです。

若者が入れる業界にしたい

土志田
例えば脇先生の話を聞けば、代議士さんは公共事業の「こ」の字を言っただけでも自分の周りから離れていくという……。そういう馬鹿げたことを改革する。全中建から改革していくのだという思いで今後やっていただきたいし、やっていかなければいけないと思っているところです。そういうところで考えれば、行政といかにうまくタッグを組んでやっていくかということも、真剣に考えていかなければいけないところだろうと思います。
私が一番心配していますのは、技術屋さんの成り手に若者がいないということです。更に一番人数の多い団塊の世代がここでドドッと抜けるわけです。若者が入ってきて、そこで食べていかれる、自信を持って食べていく、誇りを持って働いていける社会にしていかないと疲弊してくると思います。若者が入れる業界にしていきたい。それが一番強く感じるところです。

石井
静岡県の場合ですが、9月の県議会において、これまで休眠状態だった静岡県建設業審議会を6年ぶりに再開すると県知事が明言いたしました。これは建設業の活性化に向けた方策を検討する場にしたいとも言っていますので、これからはいろいろな問題をこういう審議会で取り上げてもらって、良い方向に持って行きたいなと。これに非常に私どもは期待しているのです。

国を担っている自負心を持て

豊田
先ほどから出ていましたように、本当に我々の業界というのは完全に職人というか、プロがいなくなったことは事実ですよね。ですから、我々が国を担っているのだという自負心を持っていないと、これは衰退になると思います。それと本当に若い人たちにとっていかに魅力ある産業にするかというのも大事なポイントだと思います。
もう一点、先に前田さんから話が出たように、自民党であれ、民主党であれ、とにかく一生懸命中小のためにやってくれる人を推さなければいけないと思うのです。
他に何かございませんでしたら、これで座談会を終了させていただきたいと思います。本当に今日はお忙しいところ、ありがとうございました。