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予定価格〝上限拘束性〟の撤廃を!

我が国の入札制度は、明治時代に公布された会計法により一般競争入札として運用開始された。その10年後には一般競争入札を原則としながら指名競争入札が導入され、以降、今日まで長い間、指名競争入札が続き、大げさに表現すれば日本の文化、国民性にあった制度で、我々にとっても馴染み深いものになっている。

しかし、平成6年に一般競争入札が復活し、一部の知事の不祥事から一般競争入札の適用が全国的に広がりをみたが、不良不適格業者、あるいはペーパーカンパニー企業の参入等、一般競争入札の弊害も同時に表面化してきた。このため、平成17年には公共工事を価格と品質で総合的に優れた受注者から調達することを目的とした品確法が施行されるなど、入札制度は大きく変わってきた。

現在、公共事業費(建設投資)が激減する中で、過当競争による低価格受注が横行している。予定価格の事前公表も起因とされるが、最低制限価格や低入札調査価格を予測するだけの最低ラインに張り付いた「くじ運」だのみの競争になっている。そして一時しのぎでダンピング受注を行うが利益がほとんど出ない、また現場や施工時期、さらには施工の難易度によって赤字になるケースも多く、会社の命運が「くじ運」のみに頼る異常な事態が昨今の建設業界である。

こうした事態で、多くの地方自治体が最低制限価格や低入札調査価格の設定ラインを引き上げた。予定価格(上限拘束性)がある中で、最低制限価格が引き上げられたことで、競争の幅が狭くなったことは確かである。

予定価格は、会計法第29条の6第1項で「予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格を持って申込みをした者を契約の相手方とするものとする」から上限拘束性として作成されている。しかしながら、公共工事は発注者の注文を受けて受注者が請け負う特注生産物であり、形、規格が統一完成された工場製品を売却するものと同レベルで調達価格(上限拘束性)が設定されていることに疑問を呈する。
現在の予定価格は、標準的工法を想定し、標準的な機種や能力を使用する等、あくまでも標準的なマニュアルに沿って算出されており、個々の現場条件や施工の難易度等が積算に反映されない平均的な工事見積り価格である。

各企業は、受注しようとする工事の現場条件や施工時期等を検討しながら利益を含めて実行予算を積算し応札する。無論、この実行予算はそれぞれの企業の事情により異なることは当然であるが、こうして積算された実行予算で価格競争するのが赤字工事を出さない真の競争である。しかし、予定価格に上限拘束性があるため、止む無く平均的な価格である予定価格内での競争になっている。そして、この制度は優れた技術提案を疎外することにも繋がり、日本の土木技術の進歩にも大きく影響を与えている。

予定価格によって価格の上限だけが拘束される制度は、欧米にはなく国際的に見ても特異であり、また、総合評価落札方式の導入が拡大し、その不合理性が益々顕著になってきている状況から、この予定価格の上限拘束性を抜本的に考えていく必要がある。

(栃木県F・I)