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単品スライド契機に価格交渉を

最近、建設資材の高騰への対応策として「鋼材類」と「燃料油」について、「単品スライド」条項が適用されたが、それについてのニュースが連日のように業界紙の誌面を賑わしている。これは、1980年の第2次オイル・ショック以来のことで、国を始め各地方自治体もこれに追随する形となっている。

この内容については、既にご承知のごとく、概ね次の条件に適合したものに限り、適用されることになっている。
 ①対象は「鋼材類」と「燃料油」の2資材。
 ②材料の価格上昇の増額部分のうち、対象工事費の1%を超える額が発注者負担になる。
 ③条項の手続きでは、工期末の2カ月前までに請求することとし、受注者が役所に申請し、申請受理後、変動額の算定を行ったうえで、工期末の契約変更となる。
 ④運用基準の詳細は早期に定める。(国交省は7月16日付けで運用マニュアル策定)
 前記の通りであり、前記条項の適用が我々中小企業にとって歓迎すべき事項ではあるが、もはや限界にまできてしまった建設業界の実情に照らし合わせると単純に諸手を挙げて喜ぶわけにはいかない。

石油製品の急騰は凄まじく「アスファルト合材」、「生コン」等は市場価格と積算価格との乖離が甚だしく、今回の単品スライド項目のみならず、これらの資材についても早急に対策を求めたい。
 約28年ぶりとなるこの単品スライド条項の発動を契機に、業界は全力を挙げて価格交渉に立ち向かうべきである。

また、近時、国交省及び各都道府県において、入札の不調・不落札工事が多発しており、その対策として「見積もり活用方式」等を実施しているが、一向にその効果が上がっていないと思われる。

その大きな要因として「直接工事費の見直し」と同時に「間接工事費」、「工期設定のあり方」、「設計変更の問題」等、受・発注者間において十分なコミュニケーションの充実を図る必要がある。

この様な不調・不落対策及び低入札対策を協議している最中、入札の現場は、いまだに「不当なダンピング」に明け暮れている。この「不当なダンピング」は、企業にとっては自殺行為であることを入札に参加する業者は十分に認識しなければならない。

最後に、「公共工事のコスト縮減問題」について考えると、公共投資は毎年3%前後の削減を余儀なくされ、来年度においては更に大幅な削減案が浮上している。これは「進むも地獄、引くも地獄」といった建設産業にとっての恐ろしい事態であるといっても過言ではない。

「耐震偽装」、「ダンピング受注」、「行き過ぎたコスト削減要請」等により多くの建設企業は、倒産の危機に見舞われており、建設業が産業として成り立つかどうかの瀬戸際に立たされている。

特に、地方の中小・中堅企業の疲弊ぶりは凄まじく、名門企業が、経営上大きなミスを犯したわけでもないのに、倒産・廃業に追い込まれた現状は誠に残念である。

また、公共調達で利益を出すのが悪いかのような主張が一般紙等でなされ、それに追随するかのように発注者も工事費を安く抑えることを誇る。これは明らかに不自然であり、自由主義経済社会において、企業が適正な利益を上げることは、企業の役割である。従って、利益の出ない工事を請けないことに対して、批判を加えることは間違いと言えよう。

国民が安全で豊かに生活できるように整備する社会資本のため、国等が実施する公共事業においては、適正な品質が確保されることが大前提である。そのためには、適正な材料を使い、優秀な技術を駆使して工事を施工しなければならず、それなりのコストがかかるのである。このことを国民に理解してもらうようにしなければならない。

「単品スライド」、「見積もり活用方式」等の対策が始められたことを契機に、建設産業への国民の真の理解を求める努力をする必要があると思う。 

(東京都 T・T)